専門医インタビュー
手術後はベッドで安静にしているのではなく、どんどんリハビリを行っていきます。手術翌日からベッドの脇で立ち上がる練習を始め、機械を使って膝をゆっくりと曲げ伸ばすトレーニング、平行棒や歩行器を使った歩く練習を始めていきます。多くの方が、1週間ほどで杖を使って歩けるようになり、杖を使って平地を歩ける、階段の昇り降りができるようになって手術後2週間半で退院となります。手術前に杖を使っていなければ、杖なしで退院する方もおられます。最初の頃は、手術による炎症や痛みもありますが、3ヶ月ほどで人工関節に馴染み、痛みも徐々に消えていくと思います。
退院後初めて診察に来ていただいた時に、ご自宅での生活の様子をお伺いし、膝関節の状態を確認します。日常生活に問題がなく膝関節の状態も良い場合は、通院でのリハビリは必要なく、ご自宅でできるトレーニングやストレッチを指導し、可能な範囲で取り組んでもらいます。なによりも、普段の生活を送ることも大切なリハビリになります。ただし、受診いただいた際に膝関節の動きが悪くなっているようだと、通院でのリハビリを行う場合もあります。人工関節が緩んだりすることがあるので、どんなに調子が良くても定期的な受診は忘れないようにしていただきたいと思います。
水中ウォーキング
手術後に少し転んでしまったぐらいでは、人工膝関節そのものに問題が起きることはほとんどありません。しかし骨が弱い方は、人工膝関節付近の骨が骨折することもあるので、転倒には注意していただいたほうが良いです。
手術後15年~20年経過しても、9割の方は問題ないという報告があります。ただし、膝関節に負担がかかる仕事や膝に衝撃のあるスポーツを続けていると、早目に人工関節の緩みや摩耗が生じます。スポーツでは、膝関節に大きな衝撃が加わるサッカー、テニス(シングル)、ジョギングなどは避けたほうが、人工膝関節が長持ちすると考えられています。一方で、ウォーキング、ダンス、水泳、ゴルフ、テニス(ダブルス)などは手術後も行われている方が多くおられます。特に水中ウォーキングは、体重負荷が軽い状態で筋肉を鍛えることができるのでお勧めです。
膝の痛みで外出等の日常生活が制限されていれば、もう年だからと諦めて放置せずに、整形外科を受診してください。初期であればリハビリや装具などの保存治療で改善することも可能です。膝関節の軟骨の状態によっては手術が必要ですが、膝関節の状態と患者さんの希望する生活レベルで治療方法は異なります。膝関節の専門医であれば、その方の持病や生活背景を踏まえて、適切な手術方法や時期を判断することが可能です。
あまりに我慢し、受診を先延ばしにした結果、手術が難しくなることもありますが、大分進行してしまった変形性膝関節症でも適切な人工膝関節手術を行って、膝関節の痛みと歩行を改善することは可能です。現在、膝の痛みに悩んでいる方はぜひ膝関節の専門医に相談してみてください。
ページの先頭へもどる
PageTop