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専門医インタビュー

股関節の痛み 一人で悩まず専門医に相談して適切な治療を受けましょう

この記事の専門医

小西 奈津雄 先生

秋田県

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1988年 秋田大学医学部卒業
保有資格:医学博士、日本整形外科学会専門医
所属学会:日本整形外科学会、日本股関節学会、日本リウマチ学会、日本人工関節学会

この記事の目次

変形性股関節症の手術を受けた方が良いタイミングはあるのでしょうか?

痛みと変形が少ない段階では鎮痛剤とリハビリなどの治療が行われますが、症状が進行した場合はこれらの治療では改善がみられない場合もあります。また股関節の痛みで家事が辛い、ガーデニングや旅行などの趣味から遠ざかってしまっているなど日常生活に支障を来たしていている場合に、次の治療選択肢として手術があります。
手術を躊躇って先延ばしにされたいとお考えの患者さんも多いと思います。ただし、痛みをかばいながら長い間我慢を続けていると、その影響で体のほかの部分に負担がかかり、健康だった腰に歪みが生じたり膝が悪くなったりすることもあります。そのため、変形がひどくなる前に一度手術について考えてみると良いと思います。手術をするかどうか最終的に判断するのは患者さん自身ですから、専門医の説明をよく聞いて、ご家族とも相談された上で治療方針を検討することが大切です。

手術にはどのような方法がありますか?

骨切り術

骨切り術

ご自身の関節を温存する「骨(こつ)切り術」と、悪くなった部分を人工関節に置き換える「人工股関節置換術」などがあり、症状・変形の程度や年齢を考慮して選択されます。骨切り術は股関節を形成する大腿骨や臼蓋の一部を切って関節の適合性を調整する手術です。若い年代で変形が軽度で、軟骨がある程度残っている人が主な対象となります。
ご自身の関節を残すことができるため術後も多くの動作に対応でき、関節にかかる荷重のバランスを分散させることで変形性股関節症への進行予防を期待することができます。一方で、手術後は骨が癒合して日常生活を問題なく行えるまでに、リハビリなどを含めて6~8週間の入院期間が必要となります。その間に筋力が低下すると回復に時間がかかってしまうため、高齢の人の場合には早期の荷重歩行獲得が期待できる人工股関節置換術の方が適しているケースもあります。

人工股関節置換術について教えてください

人工股関節置換術

人工股関節置換術

関節の傷んでいる部分を切除し、金属などで作られた人工関節(機械のボールジョイント)に置き換える手術です。
人工股関節置換術が適しているのは、中等度~高度の変形で、軟骨が残っていない人や強い痛みがあって日常生活に支障を来たしている人です。痛みの軽減や関節のスムーズな曲げ伸ばし、脚長差の改善を期待することができます。

人工股関節置換術の手術方法について詳しく教えてください

前方アプローチと側方アプローチと後方アプローチ

最近では、MIS(最小侵襲手術)という技術が用いられています。股関節は多くの筋肉に支えられていて、手術中に筋肉を切離することで手術後の回復の遅れや、手術後に人工関節が脱臼するなど合併症のリスクが生じることがあります。
MISは、創(傷)が小さいだけで無く、筋肉や腱・靭帯へのダメージを最小限に抑えることを目的として開発されました。例えば、股関節の前側から手術を行う前方アプローチでは、筋肉と筋肉の間を分けて侵入することで切開する量を減らすことができます。さらに関節の周りにある関節包(ほう)もなるべく切らないような工夫も行われるようになってきました。
前方アプローチのほかにも側方アプローチ、後方アプローチなどがありそれぞれにメリット・デメリットがあります。手術方法は患者さんの状態を評価しながら検討されますが、MISの技術が進歩したことにより患者さんに負担の少ない方法として期待が高まっていると思います。

手術を受けるにあたり知っておくべきことはありますか?

手術における合併症として、「感染症」や「人工関節の脱臼」のリスクがあります。事前によく理解いただいた上で手術を検討されることをおすすめします。感染症は手術後に細菌が体内に侵入して人工関節に付着することで発症します。手術部位が感染を起こしてしまうと緩みを生じ、再手術などが必要となることもあります。感染症の原因となる歯周病、副鼻腔炎、膀胱炎、風邪などを放置せず、早めに専門医で治療を受けることを心掛けていただきます。
人工関節の脱臼は、機器の進歩や技術の発達で以前と比べて少なくなっていますが、手術後に股関節を限界以上に無理に動かすと人工関節に負担がかかり脱臼のリスクが高まります。そのため、手術後に医師や理学療法士の指導を受けながら股関節の適切な動かし方を身に付け予防していくことが大切です。


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