保存療法を続けても痛みが改善しない場合　手術という選択肢もあります　専門医としっかり相談を

人工関節の手術後、仕事にはいつ頃から復帰できるでしょうか?

基本的に手術の翌日から理学療法士と一緒に膝を曲げたり筋力を鍛えたりするリハビリから始めます。その後は、平行棒を使って歩く練習を行い、歩行器を使ったり1本杖を使ったりする歩く練習を患者さんの状態に合わせて徐々にレベルを上げながら毎日行います。
患者さんの状態によりますが、事務仕事や軽作業くらいであれば、退院後すぐ復帰されている方もおられます。手術を受けられる患者さんには、年齢的に肉体労働などをされている方は少ないのですが、中には農業に携わっている方もおられ、ご自宅に帰ってから1カ月くらいで復帰されている方もおられます。しかし、いきなり無理をすると危険な場合がありますので、状態に合わせて徐々に活動量を上げていったほうが良いでしょう。

退院後も気をつけたほうが良い注意点はありますか?

水中歩行

退院後、ご自宅に戻ってからもご自分で膝の曲げ伸ばしの練習は毎日続けてほしいと思います。
長い距離を毎日歩いたり、膝を深く曲げたりする動作は、膝に過度な負荷がかかり人工関節に使用されているポリエチレンの摩耗が進みやすくなる可能性があるので、できるだけ避けたほうが良いでしょう。
手術を受けた方から、「スポーツはできますか」と聞かれることがよくあります。走ることを伴うようなスポーツは膝に衝撃が強くかかるので基本的に避けたほうが良いですが、ゴルフ程度であれば可能です。筋力を鍛えることは歩行能力の改善だけでなく人工関節を長持ちさせることにもつながるので、膝に体重がかかりにくい水中歩行や、エアロバイクなどでのトレーニングがお勧めです。

膝の痛みに悩んでいる方、手術を受けることを迷っておられる方へメッセージをお願いします

膝に痛みが出る原因やご自身の状態を知ることによって、どのような治療が適切なのかが分かってきます。膝の痛みに悩んでおられたら、まずは整形外科を受診してみてください。
現在、治療中の方は、辛い痛みを何とかしたいと考えておられると思います。保存療法を続けても痛みが続くようであれば、日常生活自体が制限されたり、精神的なストレスも溜まったりします。手術を受けることが怖いとおっしゃる方もおられますが、現在の痛みをそのまま放置するよりも、手術を受けることによって痛みが軽減できれば、より良い生活を送れるのではないかと思います。手術を迷っておられれば、主治医やご家族ともよく相談して前向きに検討してみても良いと思います。現在は、状態に応じた様々な治療法があります。主治医としっかり相談しながら、ご自分がしていきたいことに合わせた治療を選択していただきたいと思います。