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専門医インタビュー

これからの人生の質を上げるために変形性股関節症が進行する前に専門医に相談しましょう

この記事の専門医

水摩 晃一 先生

東京都

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2005年旭川医大卒、横浜市立大学附属病院、高度救命救急センター等を経て2016年より現職
日本整形外科学会専門医・指導医、身体障害者福祉法第15条指定医

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この記事の目次

変形性股関節症に行う治療法や手術を考えたほうが良いタイミングがあれば教えてください

股関節の負担を減らすために、体重を減らす

変形性股関節症と診断された場合、痛みや変形の程度、年齢や活動性などを考慮して治療方針を決定していきます。まず股関節の負担を減らすために、体重を減らしたり、杖を使ったり、立ち仕事や重労働を控えたりなどの生活指導や、股関節周辺の筋力訓練やストレッチなどの運動療法、痛み止めなどの薬物療法といった保存療法を行っていきます。しかし、保存療法を続けても、股関節が痛くて仕事や買い物などの外出が制限されるようであれば手術を検討して良い時期だと思います。手術を受けた方のなかには、日常生活の質を改善したいから、旅行に行きたいからという理由で手術を受けることを決めた方もおられます。

手術を先延ばしにされる方も多いのでしょうか?

手術に抵抗がある方も多く、手術を先延ばしにしたり、手術を希望されない方もおられます。しかし、痛みのせいで外出や仕事など活動量が制限されているようであれば、痛みを抱える期間が長くなるだけでなく、筋力が低下したり、股関節の変形がさらに進んだりしてよけいに悪化してくると思います。いざ手術を受けようと思っても、高齢になればなるほど持病など合併症のリスクが高まり、変形が進めば進むほど手術の難易度も上がり、手術後のリハビリに時間がかかることがあります。
手術を受けるかどうかは、患者さんが決めることですが、ご自身の健康を維持するために、できるだけご自身が望む人生を送るために、適切な時期に適切な治療を選択できるように、主治医とよく相談されることが大切であると考えています。

前方から行う人工股関節手術の特徴について教えてください

前側方アプローチと後方アプローチ

人工股関節の手術は、症状の進んだ骨盤側の受け皿となる臼蓋と大腿骨頭を金属などでできた人工関節に置き換える手術です。
従来から行われている手術法は、股関節の後ろの筋肉を大きく切り股関節にアプローチしていました。しかし、術後に人工関節が後方に脱臼するリスクが懸念され、深くしゃがんではダメなど禁止される動作が多くあります。一方で現在は、患者さんが仰向けに寝た状態で股関節前方からアプローチする、仰臥位前外側侵入法(ぎょうがいぜんがいそくしんにゅうほう)(ALS:Antero-Lateral Supine Approach)と呼ばれる術式があります。このアプローチの場合、手術手技の難易度は上がるのですが、患者さんの筋肉や腱を切らない組織を温存した手術なので、術後の痛みが少なく、リハビリ期間の短縮や早期社会復帰が期待できます。また、患者さんが仰向けに寝た状態なので、手術中に人工関節が正確に入っているのかレントゲン装置を用い確認することができます。股関節周囲の筋肉や腱などが温存できるとともに、正確に人工関節を設置することで、従来の後方アプローチよりも脱臼リスクを大幅に抑えることができています。

人工股関節の手術後の脱臼リスクが減ると、どのようなことが期待できるでしょうか?

以前の後方から行われていた人工股関節の手術後は、脱臼予防のためにしゃがんではいけないなど禁止される項目が書かれている分厚いパンフレットが患者さんに渡されていました。しかし、それらを全て覚えることは難しく、患者さんにとっては脱臼を気にしながら日常生活を送ることはストレスでもあったのではないでしょうか。近年行われている前方からのアプローチによって脱臼リスクが大幅に軽減できたので、特に制限される動作もなく手術後の行動を色々気にしなくて済むようになったことも良い点だと思います。


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