メニュー

専門医インタビュー

最期まで、元気に自分の脚で動けるように。それを助けるのが人工関節です。

この記事の専門医

福井県

プロフィールを見る

日本整形外科学会認定医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本リウマチ財団リウマチ登録医、医学博士(H10年6月 自治医科大学)、日本膝関節学会、関節鏡学会、日本人工関節学会、日本手の外科学会などに加盟

この記事の目次

人工膝関節置換術は誰でも受けられるのでしょうか?

手術室の風景

手術は、基本的に本人の希望に基づいて行っています。高齢の方は我慢強い人が多いのですが、膝の痛みがつらい、関節が硬くなって可動域が狭くなってしまった、いよいよ動けなくなって困った、家の中を這いずって行かないとトイレにも行けないなど、日常生活に支障が出てしまっている場合には積極的に勧めています。このように、人工膝関節置換術は変形性膝関節症に対する最後の手段ともいえるでしょう。ただ、手術は全身麻酔で行うことが多いため、糖尿病を患っているなど、全身の健康状態が悪い人は受けることができません。また、認知症が強い人も勧められません。人工膝関節置換術は、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を改善するための治療法であり、手術後に自分で膝をスムーズに動かせるように意識を持って訓練に取り組まなくてはなりませんから、それができないような人は無理なのです。

人工膝関節置換術について詳しく教えてください。

人工膝関節置換術は、傷んでいる大腿骨と脛骨の表面を削り、代わりとなる金属製のインプラントを被せ、その間に軟骨の代わりになるポリエチレンンをはめ込みます。患者さんには、「人工関節は入れ歯と同じです」と説明しています。傷んだ関節を取り換えるので、術後は痛みが取れて動きがスムーズになります。手術時間は平均2時間から2時間半、当院では術中の感染を防ぐためにひと手間加えたやり方で行っているため、一般より少し時間がかかっているかもしれません。手術時間は短い方が患者さんへの負担は少ないのですが、手術時の感染には注意しすぎることはないと思っています。

人工膝関節置換後のX線(両膝)

人工関節の耐用年数は20~30年といわれ、使用していくうちにポリエチレン部分が摩耗するため、手術を受けた年齢によっては入れ替えを考えなくてはならないこともあります。入れ替え手術(再置換術)は初回の手術よりも負担が大きいことが多いため、手術の対象は65歳以上といわれていますが、実際には50代でも変形も大きかったり、お皿の部分にも変形が出ていたりするなど、重症のケースの場合は、年齢を待たずに人工膝関節置換術を施すこともあります。また、通常の人工関節は膝全体を人工関節に置き換えるのですが、傷みの進行が比較的初期で片側の軟骨だけがすり減っている場合には、膝の片側だけを人工関節に置き換える「片側置換術」という手術を行うこともあります。片側置換術では、通常の約半分のサイズの人工関節を用いるため、患者さんの負担が少なく、皮膚の切開や骨の切除量も少なくなります。このように手術は患者さんの状態によって、一番いい方法を選ぶことが非常に重要です。

術後の生活で気を付けることはありますか?

手術後は翌日から起きて、リハビリを開始します。入院期間はリハビリも含めて、平均4~5週間で退院していく人が多いと思います。人工膝関節置換術の目標は、杖をついて自分の脚で日常生活の動作ができるようになることです。しかし、転んでしまって骨折などしてしまうのが怖いので、「あまり無理をしないで」、「転ばないように」ということだけはいつも注意をお願いしています。

農作業なども今までと同じように行うことができます

術後、行動や動作の制限は特にありません。正座もできるくらい膝が曲がるようになれば、正座していただいて問題ありません。基本的にできることは何でもしていただければと思いますが、無理に強く曲げることは避けてください。人工関節にすると、痛みが取れて動きやすくなるだけではなく、膝の曲げ伸ばしがしやすくなり、日常の生活が普通にできるようになります。例えば、農作業なども今までと同じように行うことができます。むしろ、引き籠っていると筋力が落ちてしまいますので、日常生活の活動性を上げていただく方が良いでしょう。なお、術後や手術をされていない人でも、神経原性の疼痛を訴える人がいます。そのような場合には、別の痛み止めの薬を処方したり、リハビリで筋肉を強化したりすることで大抵痛みは和らぎますので、一度近くの整形外科医に相談することをお勧めします。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop