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専門医インタビュー

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この記事の目次

母趾(足の親指)の付け根が「く」の字に変形し、痛みを生じる外反母趾。悪化すると歩行が困難になり手術が必要となることがありますが、それ以前の段階で正しく対応することで、ある程度進行を予防することもできるそうです。上尾中央総合病院の印南先生に、外反母趾の人が靴選びで注意すべきポイントや、自宅で取り組めるエクササイズなどについて伺いました。

外反母趾の進行を避けるために「歩き方」で気をつけることはありますか?

足

人は本来歩行する時、かかとで着地した後にいったん体重を⼩趾(足の小指)側に流し、最後に母趾で蹴り出すという動きをとっています。足の裏全体を使って歩くのが人間の足にとって自然な歩き方です。
それに対し、外反母趾が進んでいる人は、母趾の痛みを避けようとして内側(母趾側)に体重をかけず、外側(小趾側)に荷重した歩き方、いわばガニ股歩きになりがちです。
その人の足の状態にもよるため、一般論として「このように歩くべき」を言うのは難しいのですが、母趾で蹴り返す力を養うことは外反母趾を進行させないために重要です。
とはいえ、母趾に痛みがある患者さんに、単に「母趾を使って歩きましょう」と言っても難しいと思います。まずはご自分の足に合った適切な靴を選び、インソール(靴の中敷き)を活用するなどして、痛みが出にくい足の環境をつくることが先決といえます。

ヒールの高い靴は避けた方が良いのでしょうか?

そうですね。かかとやつま先の荷重配分を決めるヒールの高さは、外反母趾を進行させないための大切なポイントです。一般的な運動靴やスニーカーのような1.5~2センチ程度のかかとの高さであれば問題ないのですが、5センチ以上のヒールの靴は避けたいものです。
裸足のとき、人の足はかかととつま先でほぼ5:5に体重を受け止めていますが、5センチのハイヒールを履くとその割合はおよそ1:9になるといわれています。8センチのハイヒールは、ほとんどつま先だけで立っているような状態で、つま先に過度な負担を強いてしまいます。
ただ、靴はファッションの要素も大きいので、ドレスアップするときや冠婚葬祭までスニーカーで済ませるのは無理があると思います。ある程度使い分けながら、長い時間履くときはできるだけ外反母趾の対策ができた靴を履くよう意識してください。

外反母趾の部分が当たらないように、幅広の靴を選ぶべきですか?

外反母趾にやさしい靴の締め方

外反母趾では、突出部が靴に当たらないよう幅広の靴を選ぶ人が多いものの、「履ける靴」が良い靴とは限りません。健康な足には、正面から見たとき中央部が高くなった横アーチがありますが、外反母趾では多くの場合、アーチが崩れて横に広がった「開張足」になっています。幅広の靴は開張足を進行させ、外反母趾のさらなる悪化の要因となります。
足趾(足の指)の付け根部分(ボール)は当たると痛いのでゆとりを持たせる必要がありますが、その手前にあるくびれの部分(ウエスト)はしっかりと締められる靴を選ぶと良いでしょう。ウエストが締まると自然と土踏まずが持ち上がり、アーチが生まれることで開張足の進行を防いでくれます。スニーカーなどの紐靴であればそうした調整がしやすいです。できれば毎回足を入れてから紐を結び直すべきですが、面倒であれば着脱用のチャックが付いた紐靴や、面ファスナーの付いた靴を選ぶという手もあります。
また、かかとが靴の中で動いてしまうとウエストの位置が定まらず、外反母趾に良くありません。靴を履いてみたときにかかとがきちんと固定されているかどうかも確認するようにしましょう。

自分の足に合った靴を見つけるのが難しい場合、何か方法ありますか?

靴選びの際、「シューフィッター」の力を借りても良いと思います。シューフィッターはその人の足に合った靴を見立てるプロフェッショナルで、最近ではデパートの靴売り場などに有資格者を配置するケースが増えています。
ホームページなどで確認し、シューフィッターがいる店舗を選んで訪れ、気軽に相談してみましょう。
また、インソールで調整する方法もあります。足のアーチを支えられるよう中央が持ち上った中足骨パットは、外反母趾の治療で多く用いられます。外反母趾と診断されれば、保険適用でインソールをオーダーメイドすることもできます。患者さん一人ひとりの足に合わせたアーチのサポートや、足趾が当たる部分の除圧など細やかな調整ができ、作成後も不具合がないか医師がチェックをすることで、改善を図りやすいのがメリットです。

外反母趾を患っているのですが、スポーツはやめるべきですか?

マラソンやバレエなどは外反母趾が進行しやすいスポーツといわれていて、実際に外反母趾が原因で競技を断念する人もいます。
一方で、変形が進んでいても「どうしてもこの競技を続けたい」という強い希望を持つ人は少なくありません。部活動に励む高校生であっても、プロのアスリートであってもそれは同じで、スポーツをやめるかどうかを決めるのは最終的にはその人自身の判断になります。ご自分が継続すると決めているのであれば、医師はその患者さんが少しでもスポーツをしやすい足の環境づくりをサポートします。
競技で使う靴の締め方の指導やインソールの活用、日常生活へのアドバイスなど、取るべき方策はいろいろあります。例えばバレリーナの方なら、練習中はバレエシューズを使うしかなくても、それ以外の時間できるだけ足に負担がかからない靴を選ぶことはできます。専門医との相談のもと、外反母趾の治療とスポーツを両立できる道を探してほしいと思います。

外反母趾の進行を予防するためのエクササイズがあればご紹介ください

足趾の間に手の指を入れて握り込むストレッチ

足趾を正しく使えるよう、筋力トレーニングやストレッチが大切です。母趾外転筋という筋肉を鍛えるために推奨されているのが、足のグー・チョキ・パー体操です。足趾をすべてギュッと握った「グー」、母趾だけを立てた「チョキ」、5本を広く開いた「パー」の動きを1セットとして繰り返します。
普段靴を履いていると足趾を使う機会はどうしても減ってしまいますので、自宅などで靴を脱いでいる時間に積極的に取り組んでください。最初はうまく動かせなくても、根気よく続けているうちに少しずつできるようになります。1日100セットでも200セットでもやっていただきたいのですが、まずは最低、朝昼夜に10セットずつから始めるのでも良いと思います。
また、足趾の間に手の指を入れて握り込むストレッチもおすすめです。こちらも、入浴中などに習慣づけて行うと良いでしょう。

グー・チョキ・パー体操
グー・チョキ・パー体操

足の痛みに悩んでいる方へのメッセージをお願いします

知らず知らずのうちに外反母趾のような病気を進行させないため、日頃からご自分の足裏を見る習慣をつけてほしいと思います。整形外科を訪れて医師から指摘され、初めてマメやタコができていることに気づいた、という患者さんがしばしばいます。マメやタコは、足に何らかの過度な負担がかかっている証拠です。外反母趾では母趾や第2趾(足の⼈差し指)の付け根にタコができることが多いですが、人によっては母趾側をかばって歩くことから小趾の付け根に生じることもあります。
足に痛みがあり、ご自分で足の裏を見て変化に気づいた場合には、まずは一度お近くの整形外科にご相談ください。
診察を受け、専門的な治療が必要と判断されるようであれば、専門医を紹介してもらうこともできます。ぜひ足裏の不調のサインを見逃さないようにしましょう。


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