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専門医インタビュー

歩けるようになることで、その後の人生は激変します。 人工膝関節置換術のメリット・デメリットとリハビリの重要性

この記事の専門医

大分県

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昭和44年生まれ。東海大学医学部卒。平成9年、大分医科大学(現大分大学医学部)入局。平成25年から現職。日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本リハビリテーション学会、西日本整形外科学会、人工関節学会、骨折治療学会所属 エリア 大分県

この記事の目次

リハビリから退院までの主な経過を教えてください。

リハビリ室の風景

まず、血抜きの管を手術後2~3日で抜きます。その間はベッド上で脚を動かす訓練をしてもらいます。ここで管が抜けると感染症を引き起こす危険もあるので、管が抜けるまではベッド上の訓練となります。管を抜いた後は、リハビリを開始します。車イスでリハビリ室に下りて、平行棒を伝って歩く訓練から始めます。それから筋力訓練ですね。特に膝を支えて固定する大腿四頭筋の筋力強化を行います。同時にベッド上でCPMという機械を使って、膝の曲げ伸ばしの訓練を行います。1週間もすれば、回復の早い人は歩行器で歩くことができます。その後は、2~3週で杖をついての歩行、3~4週目には退院の目安となる試験外泊をしてもらいます。個々の家と全く同じ環境を病院では作れませんので、自宅で実際にお風呂に入る、トイレに入る、買い物に行くなど、日常生活動作を行ってもらいます。その上で、大丈夫そうなら退院となります。自宅での生活が難しかった場合には、何ができなかったかという宿題を持って帰ってもらい、それを重点的に訓練することで退院を促しています。

やはり、リハビリは大切なのでしょうか?

屋上にあるリハビリ用の公園

リハビリはとても大事です。手術自体はほぼ成功するのですが、その後のリハビリをしっかり継続しないと、膝は曲がらなくなり固くなってしまいます。そうなると、イスに座る時も膝が強ばり、風呂に入る時も脚がうまく曲がらないなど、せっかく手術をしたのに不自由な状態に陥ってしまうこともあります。これらを回避するためには、可動域訓練をしっかりやることです。3週目が山場で、90度を超える~120度曲がるようになることを目指していますので、ここで頑張ってと話しています。早めに入院できる人には、1週間前に入院してもらい、術前リハビリを行っています。リハビリ担当のスタッフと手術前から会っておいた方が患者さんの安心感が大きくなるというのもあります。なお当院では、リハビリ中に気分転換をして“やる気”を出してもらえるよう、屋上にリハビリ公園を設けています。入院中の患者さんは、なかなか外にも出られず、外の空気も吸えないという状況が多いと思います。リハビリの訓練場所を外にもってくることで、景色を見たり季節を感じたりしながら歩くことで、リハビリに前向きに取り組んでくれることを願っています。

退院後を含めて、患者さんに気を付けて欲しいことはありますか?

日常生活で一番避けていただきたいのは、転倒です。特に女性は骨粗鬆症の方が多いので、転ばないよう気をつけて欲しいですね。膝がグラッとなると転んでしまうので、脚上げ訓練などで筋力が弱らないよう生活指導を行っています。また、足場の悪いところに行くときや段差のある時には必ず杖を持っていくようにお願いしています。「旅行に行くときにも杖は必需品ですよ」とお話ししています。その他注意していただきたいのは、感染ですね。ケガなどによる感染症が特に怖いです。熱が出たり脚が腫れたりした時には、できるだけ早く処置をしないと、人工関節をもう一度入れ替える手術が必要になる場合もあります。人体に菌が入っても抗生物質が効きますが、人工関節には血液が流れていないので、人工関節に菌が付着したら、抗生物質をいくら飲んでも菌を殺すことはできないのです。このようなリスクを回避するためにも、術後の定期検診は忘れずに必ず受けてください。

現在、膝関節の痛みに苦しんでいる人にアドバイスをお願いします。

医学は日進月歩で発展しています。人工関節の分野でも、どんどん新しい機種が出ていますし、手術手技は患者さんの負担が少ない方法へと大きく進歩しています。以前は10年程度だった術後成績は今では20年もつといわれており、感染率も随分低くなりました。人工膝関節置換術は、変形性膝関節症や関節リウマチといった膝関節の疾患治療のために、日本で年間8万件以上も行われているポピュラーな手術です。膝の痛みで日常生活に支障が出ている人や長時間歩けない人、階段が昇れない人などは、手術を受けていただければ大きくその後の人生が変わると思います。歩けるようになることで日常が変わり、行動範囲も広がり、やりたいことがやれるようになります。みんなと一緒に旅行に行きたいのに行けない、膝が痛くて歩けないといっていた人が、「手術してから行けるようになった」という話を聞くと、とても嬉しいですね。まずは痛みを諦めずに、近くの整形外科へご相談ください。


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