専門医インタビュー
日常生活を普通に送る分には、特に注意することはありません。現在は人工関節の材質も良くなり手術テクニックも進歩していますので、大きなアクシデントがなければ20~25年は十分に持つと思います。以前は、インプラントを入れ替える「再置換術」の可能性を少なくするため、60歳以上の人にしか人工膝関節置換術を行っていませんでした。しかし現在は、手術を受ける年齢は「自分が今後の人生をどう過ごしたいか」によって決めればいいと考えています。
骨粗鬆症の人は検査を受け、問題があれば
同時に治療を行ってください
再置換術が嫌だから50代の10年間痛みを我慢しながら過ごすのか、70代で再置換術が必要になってもいいから若いうちから自分のやりたいことをやって有意義に過ごすのか、それは患者さん個人の考え方によります。一般的に、最初の手術より再置換術の方が難しいといわれていますが、再置換術用の人工関節の性能や手術テクニックも進化していますので、今から手術を受ける人はそれ程心配することはないでしょう。ただし、いくら人工関節が良くなってもそれらを支える骨が脆くなっては何にもなりません。骨粗鬆症の検査を受け、問題があるようなら同時に治療を始めることが大切です。
術前は伝い歩きしかできなかった人が、杖は要るものの一人で歩けるようになったとか、痛みのために早退や欠勤を繰り返さなければならなかった人が、休むことなく仕事ができるようになったなど、多くの喜びの声が寄せられています。ご本人だけでなく、一緒に暮らすご家族の介助の必要がなくなった、お一人で住まわれている場合は、離れて暮らす家族が世話をしに行く必要がなくなったなど、周りの人も多く喜んでいるようです。なお退院後の生活で、特に大切なのは筋肉を衰えさせないことです。中でも、大腿骨四頭筋(太ももの前側の筋肉)を鍛えて膝を安定させることが重要です。筋肉は何歳になっても鍛えることができますし、逆に使っていなければすぐに衰えてしまいます。「膝が痛いから歩かない」→「家に引きこもりがちになる」→「筋肉が衰える」→「ますます外に出なくなる」→「その結果、要介護や認知症になる」といった悪循環に陥らないためにも、退院後も運動や筋力トレーニングは継続して行ってください。手術を受けたことで膝は新しくなっていますので、要支援や要介護にならないようぜひ予防を心がけましょう。
人工膝関節置換術は、変形性膝関節症の最終的な治療法です。「少し痛い」くらいで選択する治療法ではありません。痛みがあれば、まずは装具療法や運動療法、薬物療法といった保存療法から試してみましょう。その段階で痛みが取れる人もたくさんいます。保存療法では効果がなく痛みが改善されない場合には、やはり人工膝関節置換術が有効な選択肢となります。中には、「痛みが怖いから手術は嫌だ」という人もいると思いますが、現在は痛み止めの薬が進化しており、術後の疼痛はかなりコントロールすることができるようになりました。手術を受ける施設の選択に迷っているのであれば、症例数がある程度多い施設を選ぶことをお勧めします。症例数の多い施設であれば、感染対策や手術設備などが整っている、経験豊かなスタッフが揃っているなど、手術体制がしっかりしていると思いますので、より安心できるのではないでしょうか。なお、術後の定期検診などを含め、人工膝関節置換術は担当医と一生のお付き合いになることが多いので、相性も大切です。「信頼できる」、「任せられる」と思える医師を選んでください。
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