専門医インタビュー
ジョギングなど、膝への衝撃が大きい
スポーツは避けましょう
社会の高齢化に伴って、人工膝関節置換術を受ける患者さんの平均年齢も高くなっています。当院では80代の患者さんも非常に多く、最高齢は94歳です。もちろん、手術前には心臓や肺機能といった全身状態を調べますが、各診療科間の協力体制が緊密である大学病院の強みを生かし、一般的には手術が困難と思われるような内科的な疾患のある患者さんにも積極的に対応しています。また、この年代での手術に関しては、よほどのアクシデントがない限り、人工関節の緩みによる入れ替え手術は心配ないでしょう。ただし、リウマチの患者さんや続発性の患者さんの場合、30代~40代でも人工膝関節置換術を行うことがあります。こういうケースには、将来的に再置換術が必要になる可能性について詳細にお話しするようにしています。人工関節を長持ちさせるためには、あまり激しい運動は避けたほうがいいでしょう。ウォーキングくらいなら問題ありませんが、ジョギングやバスケットボール、バレーボールなど、膝に強い衝撃がかかるスポーツは避けた方がいいと思います。術後に正座ができるようになる人もいますが、正座は膝への負担が大きいため、できる限りしないようにと伝えています。患者さんの体重や活動量にもよりますが、気を付けて使えば人工関節は20年以上持つのではないかと考えています。
1年に1度の継続的な受診をお願いし
ています
術後の定期検診は、術後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、1年後に来ていただき、レントゲン写真や動きをチェックして、異常がないかを判断します。何か異常が出たときに迅速かつ適切に対応するためにも、その後も1年に1度の継続的な受診を患者さんにお願いしています。「人工関節がしっくり身体に馴染むには、半年くらいはかかりますよ」と患者さんにお話ししているのですが、実際に「調子が良くなりました。手術して本当に良かったです」と喜びの声をお聞きするのも、やはり半年後くらいが一番多いですね。多くの患者さんが「膝が温かい」という症状を気にされるのですが、これも半年くらいで自然に治まります。退院後は、手術前にあきらめていた旅行やゲートボールを楽しむ人も多いですし、農作業に復帰したり、四国巡礼に出かけたりした人もいますよ。「あまり膝に負担をかけないようにしてくださいね」と注意はしますが、基本的にはご本人の判断にお任せしています。特に手術前に歩行障害があった人は、手術後の改善度が大きく満足度も高くなるようです。車イスでしか移動ができなかった人が、「こんなに歩けるようになりました!」と杖を突いて外来にいらっしゃると、私たち医師も本当に嬉しくなります。
やはり皆さん、「人工関節置換術」と聞くと怖いと思われるのではないでしょうか?手術のリスクとしては感染症、血栓症、緩みなどがありますが、起こる確率としては1%~数%です。つまり、手術をすることで今よりも良くなる確率の方が断然に高いのです。「手術が怖い」という理由で躊躇されているのであれば、一度、膝の専門医がいる医療機関を受診し、医師や実際に入院している患者さんのお話を聞いてみてはいかがでしょう。実際に、手術を迷っている人が外来受診時に入院患者さんの話を聞いて決心し、今では「手術をしてよかったわ~」とおっしゃる人も少なくありません。患者さんの中には、全身状態が悪いために手術をあきらめる人もいるようですが、膝の治療を行うことでむしろ内科的な疾患が改善されたというケースもあります。対応策は必ずありますので、膝に悩みをお持ちの人はいつでもご相談ください。
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