専門医インタビュー
北海道
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リハビリルームの風景
リハビリは、筋力が衰えないよう翌日から開始するのが一般的です。ベッド上でずっと安静にしていると、筋力がみるみる落ちていき、立ち上がりや歩行ができるまでの時間がどんどん遅くなります。とはいえ、患者さんが一度でもリハビリの痛さを知ってしまうと、思うようには進みません。昔は、片膝を手術した人がもう片方も痛むのに「リハビリの苦しみを思い出すと二度と手術したくない」と訴えることもありましたが、現在は大腿神経ブロックや坐骨神経ブロックなどを効果的に使用して痛みを抑え、術後翌日からほぼ無痛でリハビリに取り組むことができるようにしています。
また当院では、患者さん全員に「リハビリノート」を作ってもらい、ご自身で「どこまでの回復を目標とするのか、最終的にどうなりたいのか」を書いてもらっています。リハビリ専門医はそのリハビリノートを元に指導ブックを作り、リハビリの進み具合を段階的にチェックしていきます。患者さんの生活背景や住環境は皆違うので、到達目的も至るプロセスも当然異なります。患者さんも自分で決めた目標なので意欲的になり、患者さん同士で切磋琢磨するなどの活気も生まれます。また、「退院したらリハビリは終了」とはせず、その後もきちんと通院してもらいながら引き続き経過や達成度のチェックを行います。自宅に戻ってからは、継続的に大腿四頭筋訓練や体幹機能訓練、タオルを使って脚を曲げる訓練などを行うよう指導します。全て終了した段階で「合格通知」という書面を発行しているのですが、この合格通知が患者さんにとって「やり遂げた」という達成感と自信になっているようです。
退院後の日常生活における注意点
注意点をしっかりと理解した上で、自宅でも筋力
トレーニングを継続してください
退院後、患者さんには「よほど激しい運動でなければ何でもしていいですよ」とお話ししています。活動した方が筋力は衰えませんし、第一次産業に従事されている患者さんにとっては、軽い運動よりも日々の仕事の方が重労働ですから、このような作業にも耐えうるだけの治療とリハビリを提供するのが医師の役目だと考えています。ただ、転倒だけはしないように気をつけてくださいと注意しています。高齢で骨粗鬆症の人は、骨折をすると治るのにすごく時間がかかります。あと、「正座をしてもいいですか」とよく聞かれますが、「しなければいけない場面では、してもいいですよ」とお答えしています。日本人には冠婚葬祭など、どうしても正座せざるをえない場面がありますが、高齢者にとっては「自分だけ正座をしないのは申し訳ない」という遠慮が大きなストレスになるようです。ストレスは健康にも良くありませんので、余計な気苦労をするくらいだったら「正座をしても構いませんよ」としています。退院後の定期健診ですが、リハビリ期間中は月1回、「合格通知」をもらった年は半年に1度、その翌年からは年に1回のペースでお願いしています。遠方からの患者さんの場合は、来院時に翌年の予約をとっていただきます。定期検診ではレントゲンや採血だけではなく、トモシンセンスという高精度の画像診断システムで断層撮影を行い、1ミリ単位で人工関節の状態をチェックします。非常に鮮明な画像なので、骨とセメントとインプラントとの境目の状態までもしっかり確認でき、仮に人工関節が緩んできたとしてもそのサインを見逃すことはありません。
膝の痛みは決して我慢をせず、まずは膝関節の専門医を受診してください。痛みを我慢しても何一ついいことはありません。少しの間放置しただけで変形はどんどん進み、すぐに末期の状態に陥ってしまうでしょう。膝は人体の要です。歩けないと残りの人生が味気ないものになってしまうだけでなく、生計を立てていく上でも重大な障害となってしまいます。道東の医療圏は非常に広く、第一次産業に従事されている人にとって通院は決して容易なことではないでしょうが、だからこそ膝に痛みや違和感を覚えた初期の段階で、何とか都合をつけていただいて、専門医に診てもらい自分の膝の状態を知って欲しいと思います。専門医だからこそ、患者さんの背景をきちんと把握した上で、その人に合った治療法をできるだけ早く実行してあげることができるのです。人工膝関節置換術は、日本で年間8万件以上も行われており、手術法も確立された安全性の高い手術です。仮に手術が必要となったとしても、安心して任せていただければと思います。
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