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専門医インタビュー

股関節の痛みは我慢しすぎないで人工股関節の性能も、手術の技術も目覚ましく進歩している

この記事の専門医

  • 泉 亮良 先生
  • 埼玉医科大学 整形外科・脊椎外科 講師
  • 049-276-1111

埼玉県

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東京大学医学部卒業。JR 東京総合病院、東京大学医学部附属病院などで人工関節を中心とする手術を多数執刀。
中田病院での変形性膝関節症・股関節症の専門外来と手術も担当

この記事の目次

痛くてたまらない、つらさが目安

先生
人工股関節置換術というのは、変形し傷んだ自分の股関節を、チタンなどの金属と、ポリエチレン、セラミックで作った人工股関節に取り換える手術です。日本では年間5万人以上の方が受けている保険適応の手術です。かつては人工関節の耐用年数を考慮し、65 歳以上が適用と考えられていました。しかし、実際には40 代、50 代の方が家庭でも職場でも活動性が高い年齢で、その時期に股関節の痛みで動けないのはとても困ります。今の人工関節は非常に性能が良くなっていて、耐用年数は20 年以上と言われていますから、40 代の方にも人工股関節置換術を選択することが可能になりました。
先生
ポリエチレンの性能が良くなって、30 年、40 年持つことが期待されています。きちんと定期検診を受けていれば、微妙な変化にも早く気付くことができます。もし再手術が必要となっても、軟骨に代わる部分が少しすり減ってきた段階で、軽い対応法、例えば、ポリエチレン部分の交換だけで済むこともあります。
基本的にはレントゲン画像でみる関節の状態が、進行期、末期の場合が手術の対象となります。でも、本人がそれほど痛くなくて困っていないのなら、無理に手術は勧めません。
レントゲンで変形の状態が悪いから、一律に「手術しましょう」ということではありません。
本人の痛さ、つらさが人工股関節置換術を行う基準です。

手術でこだわっているところはありますか?

先生

人工股関節置換術で私が行っているのは、前方からアプローチする方法です。患者さんに仰向けに寝てもらい、前の方から切開を行って行きます。全身麻酔で、ふつうは1 時間弱程度で終了します。以前は、横向きに寝てもらった患者さんの後方から切開を行っていました。一般的にはこれが主流のやり方ですが、より侵襲を少なくする方法はないかと思って、たどり着いたのが今のアプローチ方法です。切るのは皮膚だけ、筋肉を分けて内部に入っていき、関節包を少し切除するだけの低侵襲の手術です。以前、片側に後方から人工股関節置換術を行った方で、今回もう片側をこの前方からアプローチする方法で手術をした患者さんからは、今回の方が、格段に手術後の動きが楽だと言われました。でも、変形が激しい方や関節が硬い場合には、従来通りに後方から行う方法を選ぶこともあります。

両側同時の股関節手術や膝と一緒に手術することも

両側人工股関節置換術後のレントゲン
私の場合は、股関節だけでなく、膝の手術もたくさん行いますので、左右両側の股関節置換術を同時に行ったり、股関節と膝関節の置換術を同時に行うこともあります。嫌な手術を2回するより1回で終わったほうがいいでしょうし、全身麻酔も1回ですみます。傷は2か所につきますが、体の侵襲そのものは2倍になっているわけではありません。
両側同時に手術すると歩けなくなると誤解されているかもしれませんが、そんなことはありません。同時に手術をしてもリハビリにかかる時間は大差なく、良い点もあります。股関節が変形した側の足の長さは短くなりますから、片側だけを人工股関節にすれば一時的に足の長さに差ができてしまいます。また、どうしても悪いほうに合わせて生活することになりますので、手術した側の股関節が柔らかくなって、例えば90 度曲がるようになったとしても、悪いほうが60 度しか曲がらないなら両側とも60 度しか曲げないのです。 左右両方の股関節に変形がある方は、同時に人工股関節置換術を行うほうがいいと思います。でも、あまり痛くないし、それほど困っていない方に無理に両側同時に行うこともないでしょう。悪いほうの痛みを10 とすると、反対側が5以上の痛みだったら両側同時の手術を勧めます。2とか3だったら、薬やリハビリで頑張ってもらいます。私たちは、患者さん一人ひとりの状態に細かく合わせた手術のやり方を提案していきます。

高齢や持病がある場合でも安全な手術を心がけています

85歳以上の高齢の方や心臓病・糖尿病などの持病がある方は、健康でまだ若い人の場合よりも、もちろん注意をして手術を行う必要がありますが、手術が危険すぎて出来ないという人は滅多にいないです。ただ、そういう方は、内科の先生や麻酔科の先生とも協力して手術を受けられる体制のある総合病院などの病院選びをした方が良いでしょう。


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