専門医インタビュー
東京
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関節リウマチや骨頭壊死など、股関節の痛みや不具合の誘因にはいろいろ考えられますが、大半は変形性股関節症によるもの。女性に多く見られるこの病気の原因は? そして、上手に克服して人生を楽しむ方法は?西東京中央総合病院の中村茂先生にうかがいました。
正常な股関節(左)と寛骨臼形成不全の股関節(右)
股関節の痛みや不具合の原因は大半が変形性股関節症ですが、日本人の変形性股関節症の8~9割は、寛骨臼形成不全によるものでしょう。股関節を作っている骨盤側の骨は、お椀のような形をしているのがふつうです。でも生まれつき、それが醤油皿のように浅い人がいます。かぶりが浅いと股関節が不安定になり、徐々に、骨と骨の間の軟骨に傷がついてしまいます。40代、50代になって初めて痛みが出た人でも、実は、12~13歳ころに寛骨臼形成不全を発症していた場合が多いと思います。 もう一つ、股関節の痛みの原因に先天性股関節脱臼もあります。生まれた時に診断を受け、装具を付けて治療した人の中には、脱臼は治っても寛骨臼形成不全が残る人もいます。 その場合、学生になって部活で運動をするようになってから痛みが出ることもあります。
股関節唇損傷
最近注目されているのが若い人にもみられる股関節唇損傷です。足を深く曲げた時などに大腿骨が関節唇にぶつかり痛みが出るケースです。 寛骨臼が深すぎる、器質的な変形がある事が原因と言われており、スポーツ選手など激しい運動をする人に起こりやすいことが分かっています。しかし関節唇に傷がついてもレントゲンではわからないので、MRI などで確認する必要があります。原因不明の痛みとしてそのままにしているうちに、股関節の変形が進んでしまいます。
寛骨臼回転骨切り術
股関節が浅すぎても、深すぎても変形性股関節症が起こりやすいのは明らかです。寛骨臼形成不全が分かり、変形の状態がひどく痛みを伴っている場合は、「寛骨臼回転骨切り術」という手術を行うこともあります。骨切り術は、30代 の女性に行うことが多いですが、中には10代で寛骨臼形成不全が分かり、股関節の変形の状態が激しく痛みを伴っている場合に骨切術を行う事もあります。寛骨臼回転骨切り術を行い20年経過しても、85%の人は人工股関節になっていません。 また股関節唇損傷の治療として、関節唇の傷ついたところを縫い合わせる股関節鏡視下術があります。内視鏡という細いカメラで関節の中をのぞきながら、傷んだ関節唇を縫合、削るなどの治療を行います。 早く受診して、早く原因が分かれば、このように治療の選択肢が広がります。
初期の段階は、保存的療法が中心になり、これには、薬物療法と運動療法があります。 基本的に薬物療法は、炎症を抑える消炎鎮痛薬の内服で、慢性期に入った痛みには、痛みの伝達経路を抑制する薬を使います。外用薬も、最近は従来の湿布のように冷やすことが目的なのではなく、薬が皮膚から吸収されて血中濃度を上げ、患部に直接働きかけるタイプの貼り薬が使われます。内服に伴う胃腸障害などの副作用を防ぐという利点があります。炎症を抑えて痛みを取る、薬物療法の選択肢も増えてきました。 変形性股関節症によって、痛みの程度が増していくと、活動量が低下し、そのため股関節周りの筋力が弱くなります。筋肉が薄くなることにより股関節の安定性が損なわれ、関節を構成している軟骨に傷がつくという悪循環が起こります。だから、痛みを和らげたら、関節にあまり負担がかからないような運動を続けて、筋肉が衰えないようにしなくてはいけません。例えば、陸上を走るよりは水中を歩く、水泳などを勧めています。 一番いいのは、専門の理学療法士に股関節周囲の筋肉を鍛える運動療法を教わることでしょう。
貧乏ゆすりも治療法?
最近の運動療法はいろいろなアイデアが出てきて、例えば、貧乏ゆすりのように細かく足を動かことで、変形性股関節症の症状が和らぐという報告もあります。 私たちが理学療法士と一緒に患者さんに勧めているのが、体幹の筋肉を鍛え股関節の痛みを軽くするという方法です。背中から、股関節をまたいで太ももにつながっている筋肉、腸腰筋を鍛えるような体操がいいと思います。でも、ちゃんとした指導者についてアドバイスを受けることが大事。痛いときに無理して動いてはいけません。股関節に隣接した関節、腰や膝を傷めてしま痛めてしまうこともありますから。
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