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専門医インタビュー

膝の痛みの原因と治療法 ~保存的療法から手術まで~

この記事の専門医

水野 清典 先生

兵庫県

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医学博士、整形外科専門医、日整会認定脊椎脊髄病医、日整会認定リウマチ医、日整会認定運動器リハビリテーション医、日整会認定スポーツ医

この記事の目次

人工膝関節置換術の際に受ける「麻酔」について教えてください。

歩行訓練を行うサテライトリハ

人工膝関節置換術を受ける際には、麻酔をうける必要があります。麻酔には、腰椎麻酔と全身麻酔がありますが、多くの場合、全身麻酔となります。麻酔は、整形外科医と麻酔医とがしっかり連携して臨みますので、むやみに怖がることはありません。術中の痛みを取り除くには全身麻酔で十分なのですが、術後の痛みを軽減するために、全身麻酔だけでなく神経ブロックや局所麻酔を併用することもあります。これらの疼痛コントロールにより、術後当日から翌日の痛みが随分軽減されるようになり、術後翌日からの歩行や階段の登り降りなど、より早期にリハビリを開始することが可能になっています。

「MIS(最小侵襲手術)」と良く耳にするようになりましたが?

傷口は約10cm

最近はMIS(最小侵襲手術)という、できるだけ小さい傷口で患者さんへの負担を最小に抑える手術方法が注目を集めており、当院もほとんどMIS法で手術を行っています。なるべく短時間で、傷口も従来の約半分(約10センチ)で処置するため、筋力の低下を最小限に抑えることができ、早期リハビリや早期社会復帰も可能になります。部分置換術の場合は、切開の長さも5センチほどで、靱帯を温存するので、さらに回復は早くなります。
MISによる皮膚切開の長さは、患者さんの症状によって異なります。また、患者さんの容態や症状によっては、行えない場合もあります。MISを希望される場合には、適応や効果について、担当の医師と十分に話し合ってください。

膝の機能の回復には、術前術後のリハビリが重要だと聞きました。

人工関節の治療は、手術をしたらそれで終わりというものではありません。手術前後のリハビリや手術の時期、手術後の検診などといった長期的な視野で治療を行う必要があります。当院では、手術の約2か月前から、まず歩行訓練や筋トレなどの術前訓練を行います。この訓練が早期退院につながります。術前訓練の間にじっくりと手術に関する情報提供をし、また介護保険の手続きなど術後準備をしっかりできることで患者さんも安心して手術にのぞめます。
術後は、体調が良ければ手術の当日から立位訓練、翌日には歩行練習を始め、2~3日後にはT字杖での歩行訓練を行い、5~8日で退院します。その後は週1度のリハビリを続け、家での自立トレーニングをしっかりやっているかについてもチェックします。3か月ほどで術後の膝の腫れや痛みもなくなり、半年でほぼ痛みがなかった頃の状態になると考えてよいでしょう。また、術後は3か月、半年、1年ごとに定期検診を受けます。術後の生活に制限はありませんが、転倒に気を付け、定期検診は必ず受けてください。

現在、膝関節の痛みに悩んでいる方へ、先生から一言お願いします。

自分の足で歩け、自分の行きたい場所へ行けることは何事にも代えがたい幸せです。膝の痛みが改善するということは、QOL(生活の質)が飛躍的に改善されるということです。患者さんは、それぞれおかれている環境が違います。ただ膝を治すだけではなくて、患者さんにあった治療を選択して、情報を提供することで、その後の生活が豊かになるように目指しています。術後の定期健診や再置換、また施設によっては患者さんの会などもあるため、手術を受けた患者さんとは一生のお付き合いだと思っています。
歳をとってもQOLを高く持ち続けたいと思っている高齢の方は、昔にくらべて遥かに多いと思います。スポーツをして体を動かしたい、社会に参加して貢献したい。 仕事、旅行など一度はあきらめてしまったことを再び可能にする選択肢として、膝治療を積極的に行っていただきたいですね。


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