専門医インタビュー
人工膝関節置換術の手術
それでも痛みが取れない場合は、外科的療法を選択します。
関節近くの骨を切って骨の形状や位置を矯正することで、膝痛の原因になっているO脚などを矯正し、膝への負担を軽減する「骨切り術」なども外科的療法の一つです。骨切り術は、若い方などで関節自体がそれほど痛んでいない場合に適応され、術後はスポーツ復帰や重労働も行えるようになります。
高齢の方などで、骨壊死(えし)や関節破壊が進んでいる重度の膝痛の場合には、「人工膝関節置換術」という手術方法を選択します。
これは痛みのある関節の表面を取り除き、その傷んだ関節の表面を人工関節に置き換える手術で、国内では年間7万件以上も行われています。手術法もしっかり確立されている安全性の高いもので、「OARSI」(先進6か国が参加する変形性膝関節症の国際学会)でも、「もっとも勧められる手術」とされています。確実に痛みが取れるため、日常生活に支障をきたしている方には適している治療法といえるでしょう。
人工膝関節置換術には、痛みのある関節を全て取り除いて置き換える「全置換術」と、症状の進行が比較的軽度で、膝関節の軟骨のすり減った片側だけを人工関節に置き換える「部分(片側)置換術」という方法があります。なお、人工膝関節置換術の合併症として、人工関節の破損、感染症(細菌が入って化膿すること)などがあります。手術にはこのようなマイナス面もありますので、手術を受ける前に担当の医師の話を聞くことが重要です。
先日、全置換術をした88歳の女性はひどいO脚でしたが、術後はすっとまっすぐになり、痛みも改善しました。手術前は70度までしか曲がらなかった膝もしっかり90度以上曲げられるようになり、家族と旅行にも行けるようになりました。人工膝関節置換術は、痛みから解放され、変形を改善した足で、もう一度「歩く喜び」を手に入れたいと考えている患者さんにはメリット・デメリットを理解したうえで検討していただきたいと思います。
また、人工膝関節置換術には更生医療や高額療養費制度を利用することができます。どのような制度を利用すれば負担を軽減できるか、専門のスタッフが相談にのります。
50歳前半から80歳後半までが主な適応年齢です。20年前は10数年だった人工関節の耐用年数も近年、材質やデザインは飛躍的に改良され、現在は20~30年と言われています。
また、以前は難しいとされてきた人工関節の破損による再手術も、機器や技術が進歩し1回目の手術と大差なくできるようになってきました。このため50代の若い方でも変形や痛みがひどい場合は、再手術を最初から考慮して手術をすれば、一生元気に歩くことができます。80代後半の超高齢者の場合は、体が健康で本人にもっと歩きたい意志が強くあるなら、手術を行っています。
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