専門医インタビュー
大腿四頭筋の訓練
ヒアルロン酸注射
整形外科では、変形性膝関節症と診断された患者さんに、まず痛み止めの飲み薬、貼り薬を処方します。初期の段階であれば、これで十分に効果があります。貼り
薬も従来のように、ただ冷やすとか温めるというだけでなく、いろいろな効用のあるものが出ています。
運動療法としては、膝に負担がかからないプールの中を歩くのが一番いいのですが、誰にでもできることではないでしょう。勧めているのは、椅子に座ったまま片足ずつ膝を曲げ伸ばしする大腿四頭筋の訓練です。膝関節を支えている周囲の筋肉の力が衰えないような運動を続けてください。
ただし、痛いときには無理してはいけません。年齢を問わず勧めたいのが、歩くことです。一生懸命歩くのではなく、程よく歩いて筋力トレーニングをしてください。
それでも痛みが取れない場合は、ヒアルロン酸の注射が有効です。
ヒアルロン酸は体内にもともとある物質です。炎症を抑え、痛みを取って膝関節の環境を調整する役割があります。
1週間に1度、まず5~10 回くらい、直接膝に注射します。正しいポイントに針を刺せば痛みなどもありませんし、十分な効果が得られている人もたくさんいます。
関節の状態がかなり悪くなっている段階でも、ヒアルロン酸をしっかり注射していくことで状態が悪化せずに維持できている人もいるようです。
さらに、靴の中に足底板を付けることで、膝にかかる負担を軽くすることもできます。変形性膝関節症と診断されても、これらの保存療法を続けて、なんとか維持している人たちがほとんどではないでしょうか。
人工膝関節置換術
寝ている時も膝が痛い、朝起きてトイレに立つのもつらい、長い間いろいろな治療を続けてきたけれどだんだん悪くなる…、症状が進み、基本的な日常生活を送るのもつらい、そんな場合に選択する治療法が人工膝関節置換術です。
でも、「寝たきりになったら手術をしましょう」というのは大きな間違い。まだ十分に活動できるのに、膝が痛いために外出を控えている、旅行もあきらめた、家事にも買い物にも支障が出ているという人にとって、ありがたい治療法だと思います。
人工膝関節にすれば、まず膝の痛みが取れますから、自由に温泉にも旅行にも行けるでしょう。「好きなことができる、楽しい人生を思い描いてください」とお話ししています。
人工膝関節置換術とは、傷んだ自分の関節の代わりに人工のものを入れる方法。
膝の前面を10センチ程度切り、お皿の表面を外して、大腿骨側と脛骨側の上下の骨に金属を入れ込み、その間にポリエチレンを挟みます。外したお皿の裏側にもポリエチレンを入れて軟骨の代わりにするものです。お皿を全部取り除くのではなく、12~15ミリほど残して関節内を切除し、そこにポリエチレンを入れるもので、表面置換型の人工膝関節といいます。
人工膝関節置換術後のX線
人工膝関節置換術は、糖尿病で血糖値のコントロールがうまくできていない状態の人を除いて、たいていの人は希望すれば行うことができます。
心筋梗塞の持病があり、心臓ステントが入っている人でも大丈夫。骨粗しょう症で骨が弱い人でも、それに対応したやり方で行うことができます。
本人が嫌だという人に、無理にする手術ではありませんし、すでに歩けない人、寝たきりの人にも行うものではありません。なぜならば、人工関節にしたそのあとのリハビリができなければ意味がないからです。
出かけたいけれど、膝が痛いから活動を抑えているという人に勧めたいと思います。元気な人なら、70 歳でも80 歳でも問題はありません。
普通は手術の前日に入院し、全身麻酔で行う手術ですが、手術の後、麻酔が覚めてからも痛くないように、硬膜外麻酔も並列して行います。
人工膝関節置換術は、一般的に1時間半から2時間ほどの手術です。経験のある医師が執刀すれば、出血などの心配もほとんどありません。
ほかの施設では輸血が必要なところも多くあると聞いていますが、私のところではほとんど輸血はしません。なのであらかじめ自己血をとっておく必要もありません。患者さんにとっては優しい手術だと思います。
手術の後は、2~3日ゆっくりして、3日後くらいから車いすで移動、4日目から歩く練習を始めます。
理学療法士と一緒に廊下を歩いたり、膝の曲げ伸ばしや階段の上り下りを練習します。手術後3週間もたつと、たいていの人は自力で歩いて、あるいは杖を使って退院していきます。
2週間ほどでどんどん歩けるようになる人もいるくらい、個人差はありますが、痛みがないから本来の膝の動きを取り戻すことができるのです。
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