専門医インタビュー
大阪府
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自己血を回収するドレナージシステムの一例
手術のリスクとしては、感染があげられます。割合は、だいたい1%くらいといわれています。もうひとつは、血栓症・塞栓症(いわゆるエコノミー症候群)です。手術中または手術後、血流が悪くなることで血管内に血の塊ができることがあります。これを血栓症といいます。この血栓が剥がれ、肺や他の臓器に流れていって詰まってしまうことが塞栓症です。
最近は抗生物質の投与や手術時の医師の防護服などで、感染については厳しく対応しています。また、発生頻度は極めて低いものの、膀胱炎や扁桃腺炎が原因で、術後半年以上、場合によっては何年も経ってから感染症が起き、化膿することもあります。化膿すると人工関節を取り出し、洗って再手術しなければならない場合もあります。血栓に関しては、手術後に体を動かさないことで血栓ができるので、手術翌日からしっかりリハビリを行います。血栓ができるのは統計によれば0.4%といわれています。また、出血のリスクですが、いまは本人の血液を事前に貯血していること、手術中に出血した血液を回収して体内に戻すことで、輸血でのリスクはほとんどありません。
手術翌日から歩行器で歩くことができます。4~5日目には杖歩行ができ、抜糸は10日目頃です。その頃には安定した杖歩行ができるので1泊、外泊をしてもらってその後、退院となります。中にはもう1週間くらい入院を続け、入院期間が3週間になる方もあります。部分置換術の場合は回復がもっと早くて2~3日目には杖歩行ができるようになり、入院期間も10日程度です。
多くの患者さんが驚かれるのですが、人工膝関節置換術を受けられた方は、抜糸の頃には痛みがほとんど消えてしまいます。また、関節の変形でO客やX脚になっていた足がまっすぐになり、女性の患者さんには、モデルさんの足のようだと言って喜ばれます。歩行障害がなくなることで、やりたいことができ、行きたいところに行けるようになります。正座以外は、テニス、卓球、ゴルフ、水泳、旅行など、何でも楽しんでください。人工膝関節は、設計上は膝が150度曲げられるようになっています。術後のリハビリをしっかりして、120度曲げられるようになれば、自転車にも乗れます。リハビリは、「痛みを解消して、早く歩きたい」という意志を持って取り組むことが重要です。リハビリを理学療法士任せにするのではなく、自分で意識をして頑張ることが早期回復に繋がります。
手術を受けられる方の平均年齢は75歳ですが、いまでは50代、60代でも、80代、90代でも大丈夫です。私が医師になった頃は70代にしかおこなえない手術と言われていましたが、技術も人工関節も飛躍的に進歩しました。昨年は176名の方に手術をおこない、39%の方が両足同時手術、7名の方が80代後半以上の方でした。
手術後の注意事項としては、飛行機に乗るときに金属探知機のアラームが鳴るので、金属が身体に入っていることを証明するカードを発行しています。MRI検査も大丈夫ですが、体内に金属が入っていることを事前に申告してください。
まず、正しい知識を持っていただきたいということです。世間にあふれている情報には、正しいものもありますが、間違いやデマもたくさんあります。インターネット等の情報に頼らず、実際に近くの専門医を受診し、ご自身の膝の状態について、正しく診断してもらって下さい。治療法や手術については、ご本人とご家族の方と一緒にじっくりお話をしますので、あまり恐れずに相談に来てください。その際、治療のメリット、デメリットなどについても、納得がいくまで十分に聞いてください。また、実際に手術を受けた方の体験談を聞いてみるのが良いでしょう。病院によっては、同じ悩みや症状を持つ人々の情報交換や意見交換の場として、「患者会」を運営していることがありますので、参加されるのもお勧めです。私は「以前の膝に戻りたい」という患者さんの願いに応えていけるように、今後も技術を高めていきたいと思います。
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