専門医インタビュー
東京都
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変形性膝関節症の治療は虫歯の場合と同じだと考えてください。虫歯も痛み止めの内服薬で痛みがとれなければ、虫歯の部分を削ってかぶせ物をしますね。人工膝関節置換術は、この虫歯の治療と同じ原理なんです。
変形性関節症では、軟骨がすり減って骨が露出します。いわゆる虫歯の状態です。この骨が露出した部分を含めて、軟骨が痛んでいる部位を削っていきます。削るのは関節の表面のみであり、リンゴの皮をむくようなイメージです。虫歯に相当する軟骨、骨を削ったあとに、虫歯で金歯をかぶせるのと同じ原理で、金属をかぶせます。
これが人工膝関節です。人工膝関節置換術では、虫歯の痛む部分を金属に置き換えて、痛みをとるだけではなく、O脚やX脚となった脚をまっすぐに矯正することができます。すなわち、痛みが取れるのと同時に、若い頃と同じようなまっすぐな脚になることができます。
変形性膝関節症の治療は虫歯の場合と同じ
若い頃に、膝の靭帯を傷めたために膝がグラグラになったなどの場合を除いて、変形性膝関節症はたいてい両方の膝が悪くなります。片方に全く症状がなければ片膝だけの人工膝関節置換術を行いますが、両膝に痛みが出ていたり、両側にO脚変形があるような場合は、両側同時に人工関節の手術を行っています。
また、両側の人工関節でも術後1日目には歩行訓練を初めて、手術後2〜3週間で、階段昇降も自立して通院でのリハビリも不要で自宅に退院可能となっています。これは、当施設では、特別な痛み止めの対策と、リハビリテーション科による先進的な取り組みをしていることにほかなりません。麻酔から覚めた時に痛みをほとんど感じないので、早い段階で、自分で足を上げたり曲げたり伸ばしたりできるのです。
術後も痛み無く歩行訓練をすることができます。そして、退院後にご家族に迷惑がかからないよう通院でのリハビリが不要なレベルまで歩くことや階段昇降が独り立ちしてから退院としています。
人工膝関節の一例
人工膝関節置換術の方法は、だいたいどこの施設でも同じです。近年低侵襲の手術が好まれているようですが、私自身は傷の大きさにはこだわっていません。留学していたカナダ・トロントで学んだのですが、欧米では傷口の大きさはそれほど問題にしていません。
大事なのは、正しい位置に人工関節を入れることができるかどうかです。傷の大きさは術後の痛みに影響ないことがわかりました。勿論、大きな傷はなく、約12cm 程の傷です。
大切なのはそのあとの出血対策、止血です。出血に備えて、手術の前に自己血を貯血しておく施設が多いかもしれませんが、私の人工膝関節置換術では、片側でも両側同時の場合でも必要としていません。貯血も輸血も必要ないのです。
この止血対策の方法はカナダのトロント大学に留学した時のノウハウを生かしています。これまでにも手術前のヘモグロビン値が極度の貧血である8の患者さんを2例、両側同時に人工関節術をしていますが、術後の輸血もすることなく通常通りの日程で退院していきました。私は止血のための管(ドレーン)も入れません。
代わりに血液を固めて流れ出ないような薬剤を使います。出血対策をしっかり行うので、手術時間も短くてすみます。片方では1時間15分程度、両側だと2時間半程度で終了します。
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