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専門医インタビュー

骨が強ければ痛みも軽くなる変形性膝関節症と骨粗しょう症の関係

この記事の専門医

斎藤 充 先生
  • 斎藤 充 先生
  • 東京慈恵会医科大学 整形外科学講座・主任教授(兼: 大学附属4病院 統括部長)
  • 03-3433-1111

東京都

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1992年 東京慈恵会医科大学卒業、1998年 東京慈恵会医科大学整形外科助手、1999年 学位(医学博士)受領、2001 年 国立宇都宮病院 整形外科リハビリ科医長、2007年 東京慈恵会医科大学 整形外科 講師(兼:附属病院 診療医長)、 2011年 東京慈恵会医科大学 整形外科 准教授、2015年 トロント大学病院整形外科人工関節チーム留学、厚生労働省薬事食品衛生審議会・医薬品等安全対策 部会委員、PMDA 専門委員、2018年 東京慈恵会医科大学附属病院 診療部長、2020年 東京慈恵会医科大学整形外科学講座 主任教授

この記事の目次

内科的な持病があっても問題なし、注意するのは骨粗しょう症

私共の病院では内科、麻酔科、リハビリテーション科の徹底したサポートにより、内科的な合併症があっても90歳でも両側の人工膝関節術をおこなっています。
勿論、このような患者さんでも入院期間は2〜3週間で、リハビリを卒業して退院していきます。例えば、脳梗塞後、心筋梗塞後、肝硬変や腎不全の透析をされているかたでも対応しています。
また、今まで、多くの人工膝関節置換術を行う整形外科医は、骨粗しょう症にはあまり目を向けていませんでした。 ひとまず切って人工膝関節を入れ、半年、1年、2年に1回と定期的に検査をしますが、加齢とともに必ず人工膝関節の周辺部分の骨や筋肉が痩せてくることによる再置換術の対策には無関心です。金属は摩耗しませんが、骨は年々弱くなります。骨折することもあります。
人工関節の寿命は10年~20年といわれていますが、それは間違いです。
人工関節自体は、何年たっても錆びたり壊れたりしません。骨が弱く細くなって、人工関節が緩んでしまうから問題なのです。幸い私共の骨粗鬆症の検査や治療に関する研究は世界をリードしており、その考えは診療ガイドラインにも採用されています。
このような新しい検査や治療を、私たちは手術前からそれぞれの患者さんの骨の専門的な検査(骨密度、骨代謝マーカー、骨質マーカー)を行い、その方にあった骨粗しょう症の治療を開始します。
これまでに骨粗しょう症の治療をしている人は、人工関節置換術をおこなった場合でも20年後に入れ替えの手術をする確率が100人中2人程度と極めて低く抑えられることが知られています。

手術後の様子は?

両側同時手術をした人で退院する時には杖が必要だった人でも、多くのかたが1か月後の検診に杖も突かずにサッサッと歩いてやってきます。
患者さんの表情が、手術前と後とでは全く違います。曲がっていた足はまっすぐに伸びてすっきりと背が高くなった感じもするし、みなさん、どんどんおしゃれになっていきます。細いパンツがはけるようになったと、嬉しそうな人ばかりです。痛みが取れる、まっすぐな足になるのが人工膝関節置換術の大きな目標です。
手術後半年くらいで、違和感もすっかりとれてしまいます。手術直前に正座ができた人なら、術後も問題なくできるようになります。

患者へのメッセージをお願いします。

斎藤 充 先生

治療や対策法は整形外科医と一緒に選択
膝の痛みがあれば、まず整形外科に相談をしてください。自分の体がどういう状況なのかを正しく知ることが大事です。どんな場合でもすぐに手術を勧めることはありません。
骨を強くすると、変形性膝関節症の痛みが軽くなり、楽になる人が多いのは事実です。将来的に手術をすることを考えるとしても、保存療法に加えて、骨粗鬆症の評価も正しく行い、しっかりとした治療を始めたほうが膝の痛みに対しても、もし、手術になったとしても強い骨であることは大事なことです。
私たちは患者さんの話を、希望を、何でも聞きたいと思っています。手術にならなくても継続して経過を診ていきます。大学病院は手術しかしない、ということではありません。
一緒に考えて治療を選択していきましょう。




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