メニュー

専門医インタビュー

人工膝関節で健康寿命を延ばす 膝痛のない生き方を決めるのは自分

この記事の専門医

清水 学 先生
  • 清水 学 先生
  • 東松山市立市民病院 副院長兼整形外科部長
  • 0493-24-6111

埼玉県

プロフィールを見る

日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、臨床研修指導医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、難病指定医、身体障害者福祉法指定医

この記事の目次

残りの人生を自分で動いて生き生きと過ごしたい

人工膝関節の一例

人工膝関節の一例

やりたいことがあるのに、膝が痛いためにできない、あきらめるしかないというのはもったいないと思いませんか。一度きりの人生です、残りの十年、歩けなくて寝たきりになってしまうのと、最期まで自分の足で動いて生き生きと過ごすのと、あなたはどちらを選びますか。
近年、人工膝関節置換術はずいぶん進歩していますが、すでに歩けない、動けなくなった人など筋肉が衰えた方に人工股関節置換術を行っても、なかなか満足のいく結果が得られないのも確かです。例えば、虫歯の治療と同じで、差し歯とか詰め物をする段階を通り越して総入れ歯にしたのはいいけれど、歯茎が痩せてくれば、思うように噛めなくなります。同じように、骨が弱くなると人工膝関節が緩んだり、上手く歩けないかもしれません。

患者さんにあった機種と手術の方法を術前に計画

手術後のレントゲン、可動域に応じて、人工膝関節の機種を選択しています

手術後のレントゲン、可動域に応じて、人工膝関節の
機種を選択しています

手術を受ける患者さんそれぞれの関節の変形度合いや、すねの骨(脛骨)、ふとももの骨(大腿骨)の大きさも違います。それを把握するために、レントゲンだけで なくCTも大事な情報になるので、この画像情報に基づいて術前計画をたてます。手術の2~3週間前に自己血を取ります。これは万が一の場合のためです。
手術時間は平均1時間半くらい、関節の変形が簡単な人も難しい人も、曲がりが悪いという人に関しても同じように手術を行います。
手術による痛みの緩和のために、麻酔薬、モルヒネ、ステロイドなどを混ぜたものを注射し、痛みをできるだけ取ろうという方法がよく行われていますが、全員にこれを用いれば良いとは思っていません。麻酔薬にアレルギーがある人もいるし、血中濃度が上がる心配もあります。痛みがあり過ぎて足が動かせないのは困るけれど、神経の圧迫を避けるため、逃避行動が取れるように、痛みをある程度感じる感覚が残っていることも必要なのです。手術後の疼痛管理に関しては、ちょうどいい具合のところを目指しています。
術後の痛みの原因の多くは、腫れです。その腫れを抑えるステロイド剤をむやみに使うのにも、私は少し抵抗を感じています。私は長時間作用する麻酔薬しか使いません。麻酔科の医師が、術後の疼痛まで十分に考え計算して使ってくれますから。

手術のこだわりは?

手術を受ける方が100人いたら、その100人に本当に満足してもらえるようにこだわって手術をしています。
人工関節は、痛くて動かしにくかった膝の動きを出来るだけ元に戻す手術なので、特に膝の曲がりが悪い方は、手術の前にできるだけリハビリを頑張ってもらいます。どのくらい膝が曲がるか、手術前の膝の可動域が術後の可動域に反映するからです。
レントゲをみれば膝の状態はおよそ想像がつくのですが、それに見合わない場合、例えばレントゲンではそれほど悪くないのに、実際はほとんど曲がらない、伸びないという場合は、何か理由があるのです。そんなミスマッチを感じる場合には特に念を入れて、手術の方法を検討します。
手術後は最低でも120度は膝が曲がるようになって欲しいと思っています。そのため、手術前に膝が120度以上曲がる人の場合は、じん帯を残した方法で行うことができますが、120度曲がらない場合にじん帯を残すと、本来の膝の能力と人工膝関節が持っている機能とがけんかをしてしまうのでかえって良くない結果になる場合があります。
このように患者さんそれぞれの関節の変形度合いや、膝の動きの状態などを考え、術後に適切な動きが取り戻せられる人工関節を選択するなど、自信を持って患者さんに提供できる手術を行うようにしています。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop