専門医インタビュー
変形性膝関節症の
レントゲン
変形性膝関節症だからといって、必ず手術をしなければいけないわけではありません。
立ち座りや歩行時などに膝を動かすから痛いのであって、じっとしていればあまり痛みを感じないこともあるわけです。実際に、「あまり痛くないので手術はしたくない」とおっしゃる方もいます。しかし、よくよく話を聞いてみると、ずっと家の中に閉じこもっていて、買い物にも出かけずに人に頼んでいるそうです。動かさないから、あまり痛くないわけです。
ですから、人工膝関節の手術をするかどうかは、その人がどういう生活スタイルを望むのかで決まってきます。したいことをがまんして、車椅子でもいいから手術をせずに生活していくのか、思いきって人工膝関節にして、自分の足で歩いたり旅行にでかけたりする生活をもう一度したいと思うのか、選ぶのは患者さん自身です。変形性膝関節症が末期でも、この痛みをなんとかして自分の足で生活をしたいと望む人には、人工膝関節は改善策になる手術だと思います。
どんな治療を受けるのか、治療法を選ぶのは、患者さん自身です。ですが、手術がこわいからといって生活の中でがまんを重ねて、一歩も外出しないような不自由な生活を続けてしまうことのリスクもよく知った上で決断してほしいと思います。患者さんには、現在だけをみるのではなく、人生を70年、80年という長いスパンで捉えて、いま必要な治療法を選択してほしいと話しています。それは、シニア世代でどんどん運動能力が落ちていくと、骨粗しょう症や認知症、ロコモティブシンドローム(寝たきりを引き起こす運動器の病気)、フレイル(日常生活でサポートが必要な状態)、心肺機能の低下など様々な病気を引き起こしやすくなるからです。
そのため膝関節がかなり変形していても歩けるという方は、そのまま運動能力が保持できていれば無理に人工膝関節にする必要はないわけです。ただし痛くて歩けないといった場合は、人工膝関節を治療の選択肢に含めることで運動能力の改善と保持が期待できます。将来、加齢によって起きてくる様々な病気を予防するために、運動能力をどうやって保っていくかということもよく考えて、手術をする、しないを決めていただきたいと思います。
人工関節の耐久年数からすれば、基本的には60歳以降で末期変形性関節症と診断されている方が対象になると考えます。ただし、60歳未満でもすでに末期変形性関節症と診断され、保存的加療をしても疼痛が強く、筋力低下、骨萎縮などが進行している場合は対象となることもあると考えます。また、70歳以上の高齢者に関しては、変形性関節症が理由で、やりたいことがやれない場合や今後の残りの人生をどの様に暮らしたいかを考えた場合に選択して頂ければと考えます。やりたいことを放棄していることにより疼痛が我慢出来ている患者さんも多いと思います。
末期の状態になると、痛みなどによってどうしても運動量が落ちてきます。その状態で年齢を重ねると相当筋力が落ち、維持するのが難しくなることが多いのです。骨量にしても同様です。特に、女性は閉経後、骨粗しょう症になりやすいといわれています。人工膝関節の手術をする場合、筋力、骨量ともにそれなりに維持されている方が良いのです。残りの人生の長さを考え、人工膝関節の手術した場合のメリットと、手術をしなかった場合のデメリットを天秤にかけて、自分はどんなふうに生活していきたいのかをイメージするといいと思います。膝の痛みを感じたら、一度、早めに整形外科を受診して、自分の身体がどのような状態になっているのかを確認してください。
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