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専門医インタビュー

人工股関節手術もコンピューター技術を活用する時代 満足度の高い治療法を選択しましょう

この記事の専門医

神川 康也 先生
  • 神川 康也 先生
  • 松戸整形外科病院 整形外科 准教授
  • 047-344-3171

千葉県

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経歴:千葉大学卒。1990年 千葉大学医学部整形外科入局、1991年 松戸市立病院 整形外科、1999年 オーストリア・ウィーン大学 ゲルストホフ病院 留学、2003年 千葉県リハビリテーションセンター 整形外科部長、2005年 帝京大学ちば総合医療センター 整形外科講師、2006年 同整形外科准教授、2013年松戸整形外科病院 関節外科センター長、日本人工関節学会 評議員
認定資格:医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、リウマチ財団登録医

この記事の目次

人工股関節置換術とはどういう手術ですか?

人工股関節の一例

人工股関節の一例

人工股関節置換術は、股関節の傷んでいる部分を取り除き、人工物に置き換えてしまう手術です。痛みの原因が取り除かれるので、痛みの改善効果が高く、動きもスムーズに改善されるのが人工股関節の大きなメリットです。
近年、40代くらいの若い人でも、人工股関節置換術を受けている人が増えている要因の一つは、人工股関節自体の耐用年数が伸びていることがあります。かつての耐用年数は10年~15年といわれていましたが、現在では約2倍の20~30年はもつといわれています。摩耗しにくい人工軟骨をはじめ、飛躍的に技術革新が進んでいます。それに加えて、手術手技も格段に進歩しています。

MIS(最小侵襲)手術には、どのようなメリットがありますか?

3D画像による術前シミュレーション

3D画像による術前シミュレーション

人工股関節置換術の合併症の一つに人工股関節の脱臼があります。人工股関節をどのような角度や位置で設置するかといった術前計画、さらに、術前計画どおり正確に人工股関節を設置できるかということも手術後の脱臼リスクに影響してきます。そのため、手術前に患者さんの股関節をCT撮影し、それをもとに3次元の画像を作成し、術前に手術のシミュレーションを行います。その計画通りに人工股関節を設置するために、手術中は簡易ナビゲーションシステムを使用しています。これによって、その患者さんに合わせた角度や位置で人工股関節が設置できるので、脱臼リスクの低減が期待できるのです。
また手術は前方からアプローチし、筋肉と腱を切らないMIS(最小侵襲)手術で行っています。手術後の回復が早いだけでなく、脱臼が起こりにくいというのが大きなメリットだと思います。人工股関節置換術をMIS手術で受けた患者さんのほとんどが、手術の翌日からリハビリを開始し、2~3週間で退院しています。
MIS手術を受けた患者さんには、特別な場合を除いては、自転車に乗ることも正座も、しゃがみ込むことも制限していません。普通に生活していただく分には脱臼リスクはほとんど考えられませんので、健康なときの股関節を実感できる患者さんは多く、手術後の満足度は非常に高いと感じています。また若い人の場合、仕事や子育てなど社会的な役割も大きな時期ですから、復帰が早く、痛みや動きの改善効果が実感できる人工股関節置換術を選ぶ人が増えているのではないかと思います。

人工股関節置換術はリスクもあるのでしょうか?

前方からのアプローチ

前方からのアプローチ

人工股関節置換術のリスクのうち大きいものを3つ上げると、「感染」、「血栓症(エコノミークラス症候群)」、「脱臼」があります。感染は、金属という異物を入れる外科手術ですから細菌感染に弱いという側面があります。
また、手術後は、足を動かさないために血栓ができやすく、無理な動作をすることで脱臼のおそれもあります。もちろん、人工股関節置換術によってこのような合併症を起こさないよう医療機関ごとに対策をとって予防に努めています。当院でも、リスク対策には最大限努めており、私の着任後はまだ一例も術後感染症を起こしていません。
血栓症についても、術後、飲み薬や注射による血栓予防の薬物療法やフットポンプ、弾性ストッキングの着用などによってしっかりと対策を取っているため重篤な例は今のところ一つもありません。脱臼についても、前方から行うMIS手術によって低減できています。このように、手術によるリスクは確かにあるものの、できる限りの対策をとることで回避できるリスクと考えることもできるわけです。
手術後は、最低年に1回は定期受診を欠かさないでください。人工股関節は人工物ですから、使っていくうちに弛みなどが出てくることもあります。自動車の車検と同じように、症状がなくても定期点検を欠かさないということが重要です。


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