専門医インタビュー
術前と人工膝関節全置換術後のレントゲン/術前と人工膝関節部分置換術後のレントゲン
セメントレスTHA/セメントTHA/ハイブリッドTHA
大別すると、骨切り術と人工関節置換術があります。骨切り術は自分の関節を温存できるのが利点で、若く活動性の高い人に行われますが、術後のリハビリに時間がかかります。人工関節置換術は、変形して傷んだ関節の表面を取り除き、金属やポリエチレン、セラミックなどでできた人工関節に置き換える手術で、除痛効果に優れ、回復も早く、患者満足度の高い手術です。さらに膝関節には表面全体を置き換える全置換術と、傷んでいる部分(主に内側)だけを置き換える部分置換術があります。部分置換術は靭帯が温存されるため、正常だった頃の膝に近い自然な動きが獲得でき、術後に膝がよく曲がるのが特徴です。「変形の程度が軽い」「靭帯に異常がない」「片側だけが痛い」などの適応の目安はありますが、侵襲が少なく回復も早いので、高齢者にも向いています。また人工関節にはいろいろな種類があるので、患者さんの状態や手術の方法などを考え、その人に適切に合うものを選択するようにしています。
また、一般的には人工関節を骨に固定する際に、膝関節では骨セメントを使用しますが、股関節には患者さんの年齢や骨の状態に応じてセメント、セメントレス、2つを組み合わせたハイブリッドタイプを適切に使い分けています。手術時間は膝関節、股関節ともに約2時間です。
前側方アプローチ
MISという低侵襲手術が行われるようになってきました。これは、筋肉と筋肉の隙間から股関節に到達するアプローチ(侵入法)で、筋肉の損傷を最小限に抑える手術方法です。仰臥位の前側方アプローチで行うと、術後の痛みが少ないために回復も早く、早期の社会復帰が期待できます。入院期間は約2週間で、退院時には杖を持たずに歩行できる方も少なくありません。MIS以外の手術では、入院期間は約3週間、退院時にはまだ杖を使用している人が多いです。
ただ、術後半年から1年程度経過すると、MISとMIS以外の手術の回復の程度に大差はないといわれています。人工関節手術で何より大切なのは正確に設置することですから、複雑な手術でMISが難しい場合には、低侵襲手術にこだわらず従来のアプローチで対応しています。
感染、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症(俗にいうエコノミー症候群)、加えて股関節では脱臼といった合併症が起こり得ますので、患者さんには術前に十分な説明を行っています。感染の予防策としては、バイオクリーンルームで手術用防護服を着用しての手術、予防的抗菌薬の投与、ポビドンヨード液での洗浄などを行っています。抗菌薬の投与に関しては、患者さんの体重、手術時間、出血量によって、適切な投与量や投与のタイミングを図っています。
血栓症対策には術後早期からのリハビリが有効なので、術後の疼痛管理も重要です。術前から痛み止め薬を投与し、術後は時期や痛みの程度に応じて種々の痛み止め薬を組み合わせて投与しています。さらに、患者さん自身がボタンを押すことで、硬膜外に挿入したチューブから痛み止めが注入されるという、自己管理型の疼痛コントロールや、いろいろな痛み止めを混ぜた薬を手術部位に注入するカクテル注射という鎮痛法もあり、以前に比べて術後の疼痛はかなり軽減しています。
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