専門医インタビュー
人工股関節置換術後の
レントゲン
変形性股関節症の場合、股関節の変形が進んでいても、あまり痛みを感じないこともあります。そのような場合は、保存療法で進行を遅らせることを目指していきます。
変形性股関節症の手術療法には、寛骨臼回転骨切り術と人工股関節置換術と大きく2つの方法があります。比較的若くて変形が少ない人は寛骨臼回転骨切り術を、変形が進行している人は人工股関節置換術を選択します。人工股関節置換術が必要になるのは、レントゲン上で変形がかなり進んでいることに加えて、強い痛みがあり、仕事や日常生活に支障がでている場合です。手術を受けるタイミングは人それぞれで、歩けなくなり車椅子になってから手術を受ける人もいれば、まだ歩けて体力があるうちに手術を受けたいという人もいます。ただし、完全に歩けなくなってしばらくしてから手術を受けた場合、筋力が相当落ちてしまっていることがあります。それでも手術を受けることはできますが、手術後のリハビリに時間がかかってしまう可能性があることは知っておいていただきたいと思います。
寛骨臼回転骨切り術
寛骨臼回転骨切り術は、骨の一部を切って移動させることで股関節にかかる負担を軽減させる手術になります。
これは臼蓋形成不全の患者さんに対して有効な手術で、自分の股関節を温存することができるというメリットがあります。年齢が40代くらいまでで関節の軟骨がまだ残っている場合に、患者さんの要望に応じて骨切り術を行います。ただし、骨切り術は、骨切りした部分が治るまでは体重がかけられません。概ね手術翌日から体重をかけることができる人工股関節置換術に比べると、骨切り術のほうが、入院やリハビリ期間が長く、どうしても仕事や家事、育児への復帰までに時間がかかってしまうことも多いです。そのため、早く社会復帰したいからと人工股関節置換術を選択する人もいます。
黄色いところが軟骨代わりとなる
ポリエチレン製部品
人工股関節の部品の性能が、以前に比べると格段に進歩しました。特に、軟骨代わりとなるポリエチレン製部品の耐摩耗性が上がり、人工股関節の耐久性も20~30年くらいまで伸びていると言われています。また、手術自体の技術も進歩しており、例えば、3Dテンプレートという術前計画を立てるシステムは、患者さんの術前のCT画像を使い、3次元の立体画像でその人に適した人工股関節の設置角度や位置を決めることができます。その他、術中の手技支援デバイスの使用も有効な方法の1つです。
また、加齢に伴って腰が曲がってくると、骨盤が傾いて脱臼しやすくなることがあります。そのため、術前に立った状態、座った状態、仰向けの状態の三方向からレントゲンを撮り、将来、起こりうる骨盤の傾きを推測して人工股関節の設置角度や位置を決めます。手術中に人工股関節を設置した後、傷を閉じる前にレントゲン撮影による位置や角度の確認を行います。
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