専門医インタビュー
両足同時人工膝関節全置換術後のレントゲン
宮内 両足同時の手術は、両足とも変形が強く、同じくらい痛みが強い、O脚変形が強い場合などに適応となり、実施可能です。ただし、両足同時に手術をすると、片足だけのときよりも手術時間が長くなるので、患者さんへの負担が増します。そのため、80歳以上の高齢者の場合は、一度の入院で片足ずつ、約1か月かけて手術とリハビリを行うことで、体への負担を軽減しながら両足とも人工膝関節にするという方法をとることもあります。
骨粗しょう症があっても人工膝関節置換術を受けることはできます。ただし、手術前に骨粗しょう症が確認できた場合は、手術前から骨粗しょう症の治療を開始します。特に、高齢者の場合、骨粗しょう症を併発していることが多いので、事前に骨密度をチェックすることは大切だと思います。
人工膝関節の一例
宮内 手術をするとどうしても体に負担をかけるので、筋力も一時的に落ちてしまいます。そのため手術では大事な筋肉を切らないことと、術後も痛くないように、ブロック麻酔やカクテル注射という痛み止めを手術中に注射することで、痛みをあまり感じずにリハビリに取り組むことができます。
また、手術後の活動性は術前の筋力に影響すると思います。つまり、人工膝関節の手術は、我慢にがまんを重ねて、歩けなくなってしまってから受けるよりも、その二歩手前くらいの段階で受けたほうが、術後の患者さんの満足度は高いと思います。
そのため、人工膝関節置換術を受ける人には、手術の3か月前くらいを目安に、筋力アップや歩き方のクセを改善するための術前リハビリに取り組んでもらいます。膝が痛いとどうしても歩くのがおっくうになるので筋力が落ち、膝の動きも悪く、動かないので体重も増え、さらに膝に負担がかかるという悪循環に陥ります。また、歩き方にクセがあると、人工関節にかかる負荷が偏り、持ちが悪くなります。そうした状態を少しでも改善したほうが術後の回復のスピードが早く、患者さん自身の満足度も高まります。痛くて動かせないという場合は、鎮痛薬を服用して痛みを和らげながら、筋力トレーニングを行います。
宮内 とにかく痛みをがまんしないでください。特に、日本人の高齢女性はがまん強く、かなり状態がひどくなってから整形外科を受診される方が少なくありません。長い間ひどい痛みに耐えていれば、痛くてがまんしている時間は大変もったいないと思います。手術をしなくてすめばそれで良いのですが、治療を受けることによって人生の質も上がると思います。術後、半年、一年も経つと自分の足のように感じられる方が多く、「こんなに良くなるなら、もっと早く人工関節の手術を受ければよかった」と後悔する人がとても多くいらっしゃいます。がまんにがまんを重ねず、早目に専門医に相談してみてください。
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