専門医インタビュー
保存的治療を続けてきたけれど痛みが改善されない場合、次の選択肢として手術療法があります。とはいっても、手術と聞くと怖いイメージがありなかなか決断できない方も多いと思います。また、仕事や介護などそれぞれの事情ですぐに手術できない場合もあるでしょう。大切なのは患者さん自身がこれから先どのようになりたいのか、ということだと思います。現在どのくらい生活するのに困っていますか?人生の目標は何でしょうか?手術はすぐに受けないといけないというものではありません。決して焦らず、どのような治療が必要なのか医師と相談しながら考えることをお勧めします。
骨切り術
変形性膝関節症の手術療法には、大きく骨切り術と人工膝関節置換術があります。骨切り術は、膝関節の一部の骨を切って角度を調整することで、荷重のバランスを整える手術です。ご自身の関節を温存することができるので、比較的年齢が若く、スポーツを続けたいなど活動性の高い方にはメリットのある手術だと思います。ただし、靭帯や膝関節の外側が健康な状態であることが適応条件となります。また変形が強すぎる場合には不向きなこともあり、その場合は人工膝関節置換術が適応となります。
人工膝関節の一例
膝関節の傷んでいるところを金属やポリエチレンでできた人工のものに入れ換える手術です。このように聞くと特殊な治療というイメージを持たれる方もいると思いますが、現在、人工膝関節置換術は国内で年間8万件以上実施されている一般的な治療法です。手術手技や人工膝関節自体の材質・デザイン性の向上により、成績も安定してきています。
人工膝関節置換術の大きなメリットは、除痛効果に優れていることだと思います。さらに、近年は、膝関節を全部入れ換える全置換術に加えて、膝関節の傷んでいる片側に対して部分的に入れ換えを行う片側置換術という手術もよく行われています。
片側置換術の一例
膝関節の内側も外側も傷んでいる場合や膝の曲げ伸ばしがよくできない場合は全置換術が適応となることが多いです。一方、膝関節の片側だけ傷んでいて、なおかつ前十字靭帯が機能している、さらに比較的膝の動きが良く、曲げ伸ばしがスムーズにできる場合は、片側置換術が選択できます。片側置換術に使用する人工膝関節の大きさは全置換術に比べて小さく、その分、手術の傷口も小さくなります。そのため全置換術と比べて術中の出血量が少ないですし、術後のリハビリもより早期に取り組める可能性があります。
ただし、患者さんの中には、片側置換術が受けられる状態であっても、将来、もう片側が傷んでしまったり、あるいはゆるみが出てしまったりして再手術になってしまうことを避けて、最初から全置換術を選ぶ方もいます。手術にはそれぞれのメリット・デメリットがありますから医師とよく相談して、慎重に選ばれることをお勧めします。
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