専門医インタビュー
疼痛コントロールはその技術が進歩したことで以前と比べても術後の痛みはかなり軽減されていると思います。例えば、ブロック注射は手術の最後に大腿神経と坐骨神経に麻酔をかけることで、術後脚を動かすことはできるけれども、痛みをあまり感じなくする方法です。このように術後痛すぎないレベルにすることで、早期にリハビリを行うことができます。リハビリが取り組みやすいということは、その分早く社会に復帰できる可能性も高まるわけです。術後リハビリを開始するタイミングは、医療施設によって多少異なりますが、一般的には車椅子に乗って移動する練習、立つ練習、歩く練習、膝を動かす練習へと進めていきます。入院でのリハビリがどのくらい必要かについても、患者さんのお住まいの環境やリハビリの進み具合によってさまざまです。医療施設によっては入院リハビリの期間を一律で区切らず、患者さんに合わせている場合もあるので、手術を受ける前に確認されることをお勧めします。
人工膝関節を長持ちさせるという観点でいうと、ジャンプしたり走ったり、跳躍とねじれを伴うような動きは控えていただく必要があります。ただ、人工膝関節の手術を受ける方は、比較的高齢の場合が多いので、そこまで激しい運動をしたいという方はほとんどいらっしゃいません。そのため、転んで骨折しない限りは、何をやっても問題ない方がほとんどだと考えています。あまりに注意点が少ないので拍子抜けする患者さんも少なくありませんが、近年の人工膝関節はそれだけ進歩していると捉えて良いと思います。
それに、手術前、膝の曲がりがあまり良くなくても、人工膝関節にして120度~130度くらい曲げられるようになれば、生活にもあまり支障はありません。ただし、膝への負担を考えて和式の生活はできるだけ控えていただき、ベッドやテーブル、イスなどを使った洋式の生活に改めたほうが良いでしょう。
人工膝関節に置換した後に、特別なケアをしなければいけないということは特にありません。術後すぐは定期的に受診して膝の状態をチェックしてもらったほうが良いですが、一年も経ったらレントゲン撮影での確認も年1回程度で十分だと思います。ただし、手術を受けた後、皆さん、ふとしたことで不安を感じられるようです。動作や生活のことなど、慎重になってしまうのは当たり前。そのようなときにすぐに受診して相談できるよう、できれば近隣の通いやすい医療施設で手術を受けられることをお勧めします。手術は受けて終わりではありません。例えば稀ではありますが、人工膝関節がゆるんでしまったり、体内の細菌が人工膝関節に付着して不具合を起こしてしまうこともあります。そのような場合に、すぐ受診して調べてもらえる環境が整っていることが大切です。
人工膝関節の手術を受けた患者さんからよく言われるのが、「もっと早く手術すればよかった」という言葉です。膝の痛みは放置していると、股関節や腰など、他の関節にも影響することもあります。そうなる前に整形外科での治療を受けていただきたい。もちろん、受診していきなり手術というわけではありません。生活改善や保存的治療も含めて患者さんやそのご家族と二人三脚で適切な治療を行えるのが地域に密着した医療施設の強みだと思います。まずはご自身の膝の状態を知ることから始めてみましょう。
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