関節治療の専門医に聞いてみました!

第276回 膝や股関節の痛み専門医と相談し
様々な選択肢から
自分に合った治療法を選ぼう

ドクター
プロフィール
資格:医学博士、日本整形外科学会 整形外科専門医、日本整形外科学会 認定スポーツ医、日本整形外科学会 認定リウマチ医、難病指定医
主要所属学会:日本整形外科学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、日本整形外科スポーツ医学会、日本股関節学会、日本人工関節学会
エリア 大阪府タグ
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村上 友彦 先生

変形性膝関節症の進行度に合わせた手術療法を教えてください

骨切り術(術前と術後)

骨切り術(術前と術後)

変形性膝関節症の進行度

変形性膝関節症には前期・早期・中期・末期の4つの病態があるといわれています。
前期は、関節軟骨自体にはまだ変化が出ていないものの、半月板損傷や靭帯損傷、あるいは隣接する股関節や足首の関節の悪化で膝関節に負担がかかっている状態です。その場合、半月板縫合や靭帯再建、股関節や足首の関節の治療などを行い、早期に移行するのを防ぎます。
早期は関節軟骨が少し変形し、痛みが出てきた状態です。日本人は膝の内側の軟骨がすり減るO脚の人が多いので、外側で体重を支えるようにすねの骨(脛骨けいこつ)を切って矯正し、内側の負担を減らす骨切り術が良い適応です。自分の関節を温存できるので術後のスポーツや日常生活動作に制限が少ないため、70代までの活動性の高い人に向いています。変形が比較的軽度なことが適応条件ですが、大腿骨と脛骨両方を同時に骨切りすることで、ある程度高度な変形にも対応できるようになりました。

人工膝関節置換術や部分置換術はどのような人に適応なのでしょう?

人工膝関節部分置換術後のレントゲン(正面と側面)

人工膝関節部分置換術後の
レントゲン(正面と側面)

変形が進み、痛みもひどくなる中期、関節軟骨が完全にすり減り日常生活が困難になる末期になると、人工膝関節置換術を検討することになります。
中期で伸展が5度~10度、屈曲が120度程度の比較的可動域が保たれているケースで片側(主に内側)だけが傷んでいる場合は、人工膝関節部分置換術での対応が可能です。片側だけ人工関節に置き換える手術なので傷口が小さく、出血も少なくてすみます。
また部分置換術では、膝関節の安定に重要な靭帯を温存できるため、自分の膝により近い自然な動きを獲得することも可能です。侵襲が少なく回復も早いので、75歳以上の高齢者にとっても有効な選択肢となるでしょう。
末期では90度曲がらない、30度以上伸びないといった可動域制限がある人が多いので、すり減った膝関節全体の表面を取り除き、人工関節に置き換える人工膝関節全置換術で可動域の改善を目指します。ただし、人工関節手術は「自分の力で買い物に行きたい、旅行をしたい」などご本人が自分の脚で行動したい意志があることが大前提であり、無理に勧めることはありません。

術中のナビゲーションシステムについて教えてください

ナビゲーションシステム

ナビゲーションシステム

手術を受けられる方それぞれ個体差があるため、骨を切る量や角度は人によって異なります。コンピュータ支援によるナビゲーションシステムを用いると、その方に適切な骨を切る量、角度、設置位置を高い精度で術中に示してくれるので、手術中に随時確認しながら、術前計画に沿った手術を行うことができます。「ナビゲーションを使うと時間がかかって手術時間が長くなるのでは?」と聞かれることもありますが、それは逆で、精度が高い手術を実現することで術中に迷いや無駄な動きが少なくなるため、結果的に手術時間は短くなります。それによって出血リスクや感染リスクも低減するので、患者さんにとっての負担も軽くなっているといえるでしょう。

人工関節の合併症について教えてください。

代表的な合併症に、人工関節の再置換手術、血栓、脱臼があります。
再置換手術になる原因として、人工軟骨が磨耗しその磨耗粉が原因で人工関節のゆるみが生じる場合や感染などが原因になることがあります。しかし、近年の人工軟骨にはビタミンEを混ぜるなどの改良が加えられ、人工関節の耐用年数は、20~25年といわれ、以前よりも耐久性は向上しています。感染は、特に糖尿病を患っている方でそのリスクが高まるので、血糖値をしっかりコントロールすることが大切です。高齢者の場合、いろいろな疾患を患っている方も多いと思います。そのため、さまざまな診療科のある施設のほうが万が一の出来事にも対応でき、安心して手術を受けられるのではないでしょうか。
術後じっとしていると血栓のリスクが高まるので、術後は脚を動かすなど早期にリハビリを開始し血栓予防を行っています。
股関節の手術の場合、頻度は少ないですが一定の確率で脱臼のリスクがあります。しかし、手術方法や人工関節の選択、関節周囲の組織の治療だけでなく人工関節を適切な位置に設置することでリスクを軽減させることができます。また手術方法によって、脱臼しやすい姿勢がありますので、そのような姿勢をとらないことも大切です。


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