専門医インタビュー
大阪府
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中高年の女性に多く見られる変形性膝関節症。症状が軽いと我慢しがちですが、他の病気が隠れていることもあるといいます。「膝に違和感や痛みがあれば、一度は整形外科を受診してご自身の膝の状態を正しく把握しましょう。多くの場合は減量や筋力訓練といった保存療法で改善する場合もあります」とアドバイスする阪和人工関節センターの格谷先生にお話をうかがいました。
大腿骨顆部壊死
痛みの原因として多いのは変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。これは、膝関節の大腿骨(だいたいこつ=太ももの骨)と脛骨(けいこつ=すねの骨)の間でクッションのような役割をしている軟骨が加齢によって摩耗・変性し、骨同士が直接当たるようになって痛みを生じる疾患です。加齢以外にも肥満や筋力低下が原因で起こることもあります。歩き始めや立ち上がる時に違和感や痛みがあるといった初期症状は、40代から50代で出てくることが多いようです。
症状が軽いと我慢しがちですが、違和感や痛みの原因が大腿骨顆部壊死(だいたいこつかぶえし)であったり非常にまれですが骨腫瘍(こつしゅよう)といった別の疾患が隠れていることもあります。症状があれば一度は整形外科を受診して、ご自身の膝の状態を正確に診断してもらうことをお勧めします。もし症状が軽度だったとしても整形外科でレントゲン検査を受けておくことで、今後症状が進行した場合に「症状がどのくらい変化したのか」を判断するのに大いに役立ちます。また信頼のできるかかりつけ医を見つけておくことで、痛みが悪化した場合にも相談しやすいなどメリットがあると思います。
まずは保存療法(手術以外の方法)から始めます。変形性膝関節症は症状に応じてステージ1~4に分類されますが、ステージ1~2の比較的変化が少ない人で痛みがある場合は、痛み止めの内服薬や外用薬でまずは痛みを抑え、それと同時に減量や筋力訓練の指導を行います。体重に対して5%の減量と2カ月間の筋力訓練を行うことで、症状が改善するケースも少なくありません。また、足底板(インソール)やサポーターといった装具療法が有効な場合もあります。ステージ3以上にはこれらの方法に加え、症状に応じてヒアルロン酸やステロイドの関節内注射を考慮します。ヒアルロン酸注射は潤滑作用があり長期間にわたって鎮痛効果が期待できる治療です。ステロイド注射は副作用が懸念されていましたが、近年では症状の強い時に回数を制限して行えば、鎮痛効果が高く副作用は少ないということが分かってきました。
水中ウォーキング
変形性膝関節症の大きな問題は「痛いから動かない」「動かないから筋肉が痩せる」「筋肉が痩せるから増々痛い」という悪循環です。これを断ち切るためには身体を動かす習慣を身につけることが大切で水中ウオーキングやホームエクササイズなどが効果的です。
多くの場合、保存療法だけで症状の改善や進行の抑制が期待できるのですが、どうしても痛みが取れず、日常生活に大きく支障をきたすようであれば、手術も選択肢として検討することになります。例えば、階段の昇り降りが手すりを持って両足を揃えながら一段ずつしかできなくなったり、後ろ向きで降りたりしなければならなくなった時は、手術を考えてみても良いかもしれませんね。
手術を決めるのは患者さんご自身で、医師はよほどの状態でない限り最初から手術を勧めることはありません。ただし、症状の進行具合や全身状態などいろいろな状況を踏まえた上で、患者さんにとって手術のタイミングと判断した時には医師から手術を提案することもあります。術後のより良好な機能改善を獲得するためにも、医師やご家族とよく相談して適切な手術のタイミングを逃さないようにしましょう。
手術には大きく分けて「関節鏡手術」と「骨切り術」「人工膝関節置換術」があります。
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