専門医インタビュー
人工膝関節置換術は、手術だけですべてが解決するわけではありません。手術ももちろん大切ですが、その後のリハビリが非常に重要となります。入院中はスタッフと共にリハビリを行っていただきますが、決して受動的にはならないでください。患者さんが主体的、積極的にリハビリに参加するという気持ちを持つことで、術後の回復が良好な経過をたどる傾向が見られます。術後のリハビリの流れとしては、手術翌日にはベッド上で膝を動かす訓練や、車椅子に移る練習を始めます。その後は痛みの程度に合わせながら、歩行器や平行棒を使って起立歩行訓練を行っていきます。それぞれの患者さんの住環境を把握して入浴動作訓練や階段昇降訓練を行い、退院後の生活に困らないくらいの動きを身につけて退院となります。畳の上での生活に対応する動作訓練も行いますが、和式の生活は膝にとって負担になることも多いので、可能であればベッド、椅子といった洋式の生活を取り入れていくといいかもしれませんね。
傷口から細菌が入って人工関節の金属部分に感染すると、金属の表面に細菌が膜を作って住み着いてしまいます。こういう状態になるともはや抗生物質で対処することは困難で、稀にですが人工関節を入れ替える手術が必要になることもあります。術中の感染予防策としては、手術は清潔度の高いクリーンルームで特殊な手術服を着て行い、術中・術後には抗生物質を予防投与するなどして、細心の注意を払っていいます。
また、退院後に傷口から感染する可能性もあります。術後1カ月~2カ月は不特定多数の人が入るような温浴施設での入浴は控えたほうがいいでしょう。虫歯菌や水虫菌など体内の菌が運ばれてきて炎症を起こすこともあるので、予防に努めると共に、発症した場合は早めの治療を心がけてください。
やはりリハビリですね。筋力がつくと、その筋力で膝関節が支えられるため、人工関節への負担も軽減します。筋力を強化する運動は退院後も継続して行いましょう。サッカーやバスケットといった激しいスポーツはポリエチレンが摩耗する可能性があるので避けたほうがいいですが、ゴルフ、社交ダンス、ボーリングなどは行っていただいて構いません。もともとやっていた人であればスキーや山登りも大丈夫です。ただし、新たに始めたいスポーツや趣味がある場合は、主治医に相談してからのほうが安心です。
超高齢社会を迎え、日本人の平均寿命はますます延びています。しかし、こういった時代に肝心なのは、介護などを受けずに自立した生活が送れる健康寿命を延ばすことではないでしょうか。そのためには、自分の脚で歩くということが重要な意味を持ちます。膝が痛くて歩かないようになると家に引きこもりがちになり、気持ちが落ち込んでしまう人も少なくありません。膝の痛みが改善して活動性が上がれば、精神的にも肉体的にも健康で過ごせる期間が長くなる可能性があります。大切なのは、膝の専門医を受診して今の膝の状態を正確に診断してもらい、適切な治療方法を一緒に考えてもらうことです。膝に痛みがある場合は、専門医に相談しましょう。
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