専門医インタビュー
寛骨臼骨切り術
股関節の変形があまり進んでおらず、まだ軟骨が残っている10代後半から40代くらいの方で、痛みはとれないけど、まだ人工関節にするには早すぎるという方が対象になる手術です。自分の関節が温存できるので、手術や術後経過が良好な場合、一生自分の関節で歩ける可能性があることが魅力です。手術は、屋根が浅くなっている寛骨臼の骨を移動させ正常に近い状態にします。従来は、皮膚切開の傷が30cmほどになり、術後の安静期間も長く、入院期間が3ヶ月ほどかかっていました。しかし、骨を切る方法を従来の骨盤の外側から内側ではなく、内側から外側へ切る新しい方法を採用することにより、皮膚切開が約7cm、ベッド上安静も1~2日、術後2ヶ月で筋力が術前レベルに回復できるようになっています。筋肉もあまり切らないので、手術後2日目から車椅子に乗って動けるようになり、リハビリも術後早期から開始できるようになりました。
股関節の変形が進み軟骨がなくなり、痛みが強い場合などに実施する手術です。しかしなかには、寛骨臼骨切り術が適応だと思う方でも、仕事や家庭の事情で長期入院が難しい場合、入院期間が寛骨臼骨切り術よりも短い人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)を希望されることがあります。手術は、傷んだ股関節の骨を取り除き、金属やポリエチレンなどの人工物に置き換える手術ですが、患者さんそれぞれ骨の大きさや形、変形の程度が異なります。そのため、患者さん一人ひとりの身体に合わせた様々な人工関節を使い分けた手術を行っています。以前の人工関節は、特に軟骨の変わりになるポリエチレンが摩耗し10~20年程度で新しい人工関節に入れなおす手術が多く、60代になるまで人工関節の手術をしてはダメといわれていました。しかし、最近では、ポリエチレンの性能が向上し磨耗しにくくなったので、より長期間の耐久性が期待されているので、若い方に対しても人工関節の手術が行われるようになっています。
人工股関節置換術の流れ
脱臼しにくい人工股関節の一例
(黄色い部分がポリエチレン)
寛骨臼骨切り術では片方ずつ行うことが多いのですが、人工股関節置換術の場合、両脚の手術を同時に行うこともあります。その方の身体への負担や貧血などの持病、入院期間などを考慮して決定しています。両脚を同時に手術する特徴として、手術で両足の長さを揃えやすく、また片脚ずつ手術するより1ケ月ほど入院期間を短くできるだけでなく、入院などにかかる費用も少なくすみます。手術にともなう代表的な合併症に、人工関節にばい菌が付着する感染と足に血のかたまり(血栓(けっせん))ができる血栓症があります。感染予防の対策としては、手術中に十分な洗浄や手術室内を清潔にすることを徹底し予防します。また、血栓予防としては、ふくらはぎを圧迫したり足を動かす機械を術後すぐに使用し、血がさらさらになる薬を使用したり、早期にリハビリを開始し血栓予防対策を行っています。
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