専門医インタビュー
大阪府
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股関節、膝関節ともに、まずは手術以外の保存療法が選択されます。保存療法で代表的なのは運動療法です。ただし、痛みを我慢して運動を続けると悪化する可能性があるので、痛みが強い場合は消炎鎮痛剤で炎症を抑え、様子を見ながら適切に取り入れていきます。運動療法で体幹や大腿四頭筋(だいたいしとうきん=太ももの前側の筋肉)を鍛えると、筋肉自体が自前のサポーターとなり、安定性が得られ、痛みが軽減していきます。過体重の人は同時に体重をコントロールすることも重要です。こういった保存療法はご自身の努力に負うところが多いため、継続が難しい面もありますが、まじめにこつこつ取り組んでいる人にはかなりの改善が見られます。
ただし、3カ月~6カ月保存療法を続けても症状が治まらず、日常生活に制限が出てきているようであれば、手術も選択肢の一つとなります。
人工股関節(左)と人工膝関節(右)の一例
年齢が若く関節の変形が軽い人には、骨切り術(こつきりじゅつ)が第一選択肢となります。これは、関節近くの骨を切り、正常な軟骨が残っている部分に体重がかかるように矯正する手術です。術後に患部への荷重制限や運動制限が必要ですが、ご自身の関節を温存できるため、骨が癒合(ゆごう)した後は日常生活にほとんど制限がありません。ただし、手術を受けるにあたり感染や血栓症などのリスクに加えて、骨が癒合するまでにある程度の期間を必要とします。
一方、変形が進んで日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合には、人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)が適応となります。以前に比べて人工関節の耐久性が長期化したことで、70代以降が適応といわれていた人工関節置換術も、現在では60代での手術が一般的となり、中には50代で手術を受ける人もいらっしゃいます。
傷んだ股関節全体の表面を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換えることで、早期に痛みを改善し、生活の行動範囲を広げることが可能になる手術です。手術方法には、大きく分けて前方アプローチ、側方アプローチ、後方アプローチの3つがあります。切開を行う位置から切除・温存する筋肉などはアプローチごとに異なり、それぞれに長所と短所があるため、患者さんの変形の程度などに合わせてアプローチを決めます。近年では、できる限り筋肉や靭帯を温存することで患者さんの負担を軽減する手術方法が確立され主流となりつつあります。
全置換術と部分置換術
人工膝関節置換術には、膝関節全体を人工関節に置き換える全置換術と、傷んでいる片側(主に内側)だけを置き換える部分置換術があり、どちらも除痛効果に優れています。
全置換術は関節全体が傷んでいる場合に適応となります。関節自体を置き換えますのでO脚の改善にも有効です。一方、部分置換術は、「片側のみ変形している」「靭帯機能が残っている」といった適応条件がありますが、患者さん自身の関節を半分残すことができるため、本来の膝により近い自然な動きを獲得することが可能です。また、傷口が小さいため手術時間や入院期間が短く、術後の腫れなどの症状も少ないため、全置換術と比べて早期の社会復帰が可能なケースが多いです。それぞれ適応が異なりますので医師の判断のもと患者さんの年齢や変形の程度、活動範囲などを総合的に検討した上で決定します。
手術には感染や血栓症など合併症のリスクを伴いますが、施設ごとに対策を行うことで予防に努めています。感染対策では、クリーンルームという清潔な部屋を使い、特殊な手術服を用いて手術を行います。血栓症対策としては、肥満や日常の活動量が低いといった血栓リスクの高い人には、術前にも血栓ができていないかの検査を行い、術後は血液をサラサラにして血栓ができにくくなる薬を短期間投与します。安静にしていると血栓ができやすいので、早期にリハビリを開始するのも重要な予防策です。術後に痛みがあるとリハビリの妨げとなるので、術中に複数の薬液を関節周囲に注射するカクテル注射や神経ブロックで痛みを抑え、術後早期からのリハビリ開始を可能にしています。
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