専門医インタビュー
埼玉県
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術後の痛みは、麻酔科医と連携してしっかりコントロールしていきます。痛みの感じ方は個人差が大きいので一概にはいえませんが、人工関節にすることで股関節自体の痛みは軽減するため、「手術前の痛みに比べると傷の痛みは大して気にならない」という患者さんが多い印象にあります。神経ブロック注射などの局所的な鎮痛薬を使うことで、無理なく術後のリハビリに入っていけるようになっています。
リハビリは、採血で異常がなく麻酔の影響もなければ、手術翌日から立ち、歩行器を使って歩くことから進めていきます。股関節を安定させるため、おしりや太ももの筋肉を鍛える筋力トレーニングも並行して行います。足を引きずったり、体を揺すって歩くのが癖になっていた患者さんでは、歩容改善の指導をあわせて行っていきます。
前方アプローチでの手術では、退院後の生活で特別な制限は設けていません。ただ、関節包などの軟部組織が修復されるまでの6~8週間は、脱臼しやすい姿勢は意識して避けた方がいいでしょう。具体的には、ボウリングの投球後の蹴り足のような姿勢や、つま先を外に向けた動きです。また、電球の取り替えなどで脚立に登り、足が段違いになった状態で負荷がかかるのも脱臼しやすい姿勢になります。
術後2カ月もするとそうした制限は減ります。スポーツに関しても、サッカーやラグビーなどの激しいコンタクトスポーツを除き、特に禁止していません。患者さんの筋力と希望に合わせて、ジョギングやサイクリング、山登り、テニスなど行ってよいと思います。
発生率は高くはありませんが、合併症として感染があげられます。術中の感染は、人工関節を設置する過程で細菌が侵入することで起きるもので、抗生剤の点滴などで予防していきます。特に、糖尿病の人では感染リスクが高くなるため、術前の血糖値のコントロールが欠かせません。また、虫歯があると血液を通して菌が人工関節に流れる可能性がありますので、手術前までに歯科治療を終わらせるようにします。感染リスクは術後もゼロではなく、虫歯になったときや怪我をしたときは、放置せずにすみやかに治療してください。
感染以外では、極めてまれですが、手術の過程で神経を傷つけてしまい、しびれなどの障害が出ることがあります。
同じ変形性股関節症という病気でも、患者さん一人ひとり抱える事情は異なります。症状が進行していても、「仕事の都合で今は手術できない」「親の介護があるから入院で家を空けられない」という患者さんもいます。そうした背景を踏まえ、その人に合った治療法をオーダーメイドで考えていくのが私たち医師の仕事です。手術は受けられない人でも、リハビリや投薬など、なるべく痛みを和らげるためにできることはあります。股関節の痛みがつらいときは、ひとりで悩まず専門医に相談してほしいと思います。
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