専門医インタビュー
大阪府
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弾性ストッキング
入院中は深部静脈血栓症、俗にいう「エコノミークラス症候群」に注意が必要です。ふだん、心臓が全身に血液を送っていることはご存じの通りですが、脚に送られた血液は、歩いたり走ったりしてふくらはぎが動く力を利用して心臓に戻ります。しかし、長時間にわたって同じ姿勢でじっとしていると血液循環が破綻して、脚に血がたまったままになってしまいます。すると血栓ができ、それが血流にのって肺の血管を詰まらせると命に関わることになります。そのため、入院中は、リハビリ以外にもベッドで体操してもらったり、弾性ストッキングを履いてもらったり血栓ができにくくなる薬を使用し予防します。
退院後に注意していただきたいのは感染です。特に、脚などのケガや巻き爪を放置していると蜂窩織炎(ほうかしきえん)といって、皮膚が傷つくことでそこから細菌が入り血流に乗って人工関節が感染することがあります。水虫など感染の可能性となる原因があれば放置せずに早めに治療を受けるようにしてください。
手術は痛いと思われている方も多いですが、現在は、色々な薬を組み合わせるなどして、できるだけ手術の痛みを感じないようにする工夫がされ、かなりうまくコントロールできるようになっています。入院期間中に立つ歩くといったリハビリを行いますが、動かせば痛みが出てくることもある場合は痛みをこらえながらリハビリを行うのではなく、痛みの具合を見ながらリハビリを行います。入院期間は一般的に2~3週間で、ひとりで自宅でリハビリができるようになるのが退院の目安です。
退院後の日常生活では、正座や飛んだり跳ねたりといった運動は避けるようにしてください。筋肉と日常生活のバランスがとれるまで3か月ほどはかかります。その間は腫れたりすることもありますが、筋肉が戻ってくると収まってきます。リハビリ用の体操を覚えてもらって家事などの合間にやってもらうようにしていますが、退院すれば日常生活がリハビリになりますし、特に難しい動きの体操などが必要なわけではありません。
痛みを我慢していても解決策を見つけるのは難しいと思いますので、まずは整形外科を早めに受診し痛みの原因を確認することが大切です。早期に受診することで、治療方法の選択肢が広がるだけでなく、変形性膝関節症が初期の段階であれば手術以外の方法で痛みの改善が期待できます。人工関節の耐久年数が30年以上といわれるようになりましたが、手術を受けるタイミングによっては、より侵襲のすくない部分置換術という選択もできます。受診するのも手術を受けるのもタイミングが大事です。
膝に痛みがあれば整形外科の先生に相談し、その原因を知り適切な治療を始めてほしいと思います。
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