専門医インタビュー
変形性膝関節症や股関節症の方で痛みのせいで脚を上手に着いて歩けなかったり、脚が痛いので外出するのが面倒だと感じられる方がおられます。痛みのせいで孫の面倒がみられない、仕事ができないなど普段できていたことができなくなるといった日常の生活に支障が出ている場合、保存治療(投薬治療、安静、下肢筋力トレーニング)を3ケ月以上続けても痛みが改善しなければ手術を検討したほうが良いでしょう。
手術には骨(こつ)切り術や人工関節置換術がありますが、あまりにも動かないでいる期間が長いと、ふくらはぎや太ももの筋肉が萎縮してしまいます。そうなると通常の生活はもちろんの事、術後のリハビリがスムーズに進まず手術しても満足の行かない結果になってしまうことがあります。私が医師になった頃は、手術は最終手段と言われていましたが、近年手術はむしろ患者さん自身の機能改善を促し自立した生活の期間を長くします。適切なタイミングで手術を受ければ、患者さん自身の生活の質が上がります。患者さん自身が元気なうちに手術を受けることが大切です。
骨切り術(左・股関節、右・膝関節)
人工関節置換術(左・股関節、右・膝関節)
ポータブルナビゲーション
痛んだ膝の表面を取り除き人工物に置き換える人工膝関節置換術では、大腿骨頭(こっとう)中心と足関節の中心を結ぶ膝関節の中心に人工関節が設置されることが理想的です。理想的な場所に人工関節が設置できることは、正しいアライメントが再現されるために再手術のリスクが軽減されます。そのため通常は骨を削る量や角度を測る器機を使い人工関節を設置する場所を決定するのですが、骨の形態は人それぞれなので医師の経験に頼る部分もあります。通常のナビゲーションは骨の侵襲が大きいのですがポータブルナビゲーションは非常に侵襲が少ないことが特徴です。モニター画面に骨を切る角度が手術中リアルタイムに表示されます。医師はその情報を確認しながら、骨の変形に惑わされることなく正しい角度での手術が可能となるので、術前に想定していた場所に的確に人工関節を設置できます。
手術に耐えられる心肺機能をお持ちの方でしたら、現在は80代でも90代でも手術が受けられます。手術による疼痛コントロールは以前と比べ大分進歩しています。疼痛コントロール手段として硬膜外麻酔もしくは大腿神経ブロック、坐骨神経ブロックを実施します。さらに膝の手術では術中に痛み止めなど複数の薬剤を混ぜたものを膝の周りに散布するカクテル注射を併用します。
術後は徹底的なアイシングを行います。また以前と比べ出血のリスクが大幅に軽減され、人工膝関節手術では輸血するリスクが少なくなりました。また現在は痛み止め薬の種類も多く、腫れや痛みを軽減するさまざまな方法があるので、それらを効果的に組合せ疼痛管理が行われています。
人工膝関節置換術ではO脚がひどかった方の脚の変形を改善します。手術前と比べ、術後は膝周囲の靭帯バランスが大きく変わるので、最初の頃は足部の荷重の設置バランスや歩く姿勢などが直ぐには慣れないかもしれません。しかし術直後より専任の理学療法士と一緒に、歩く訓練や筋力トレーニングなどのリハビリを行います。
順調に行けば術後3~4週間で退院できます。ご自身の膝として慣れるのに3ヶ月から半年程度かかることもあります。
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