専門医インタビュー
人工関節という言葉はご存知の方でも、実際にどのようなものなのかということをご存知でない方が多くおられます。そのためか、人工関節と聞くと、膝がロボットやサイボーグのようになってしまうのでは、と誤解されるかもしれません。全置換術は、傷んでしまった膝の表面を削り、その部分に金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える手術なのです。全置換術が登場し、かなり長い年月がたち、手術方法やどのようなことが長期成績に影響を与えるのか、といった多くのデータが蓄積されました。その結果、手術方法が確立され、国内では10万例ほど行われる一般的な手術になってきました。また、以前よりも使用されるポリエチレンなど材質やデザインが向上したことで耐久性がアップし、手術後15~20年たっても90%は問題なく使用されていると言われています。骨切り術と比べると、日常生活や社会復帰が早いのことも特徴です。しかし、十字靭帯を切り、人工のものを入れるので、違和感を覚えることや、人工関節の摩耗や緩みなどによって再度手術が必要になる可能性があります。
全置換術の流れ
軟骨の損傷が内側に限定され、変形が進行しておらず、靭帯機能が正常であり、関節リウマチなど全身に炎症性疾患がないといった条件に合えば、悪くなっている部分だけを換える単顆(たんか)置換術という方法もあります。全置換術に比べると、前・後十字靭帯が温存できるので、膝の感覚が生かしやすく、違和感が少ない手術です。また、人工物を入れる大きさも小さく、傷口も小さく、膝の曲げ伸ばしがしやすい、患者さんの満足度が高い手術です。しかし、全置換術に比べると、耐久性に懸念があると言われ、70歳以上で行われていることが多くあります。そのため、若い方では全置換術が行われることが多いのですが、活動性が高い方では、仕事などで支障が生じる可能性があります。欧米では、比較的若い方でも単顆置換術を行い、もしも手術をしていない側が損傷してくれば、全置換術を行うこともあります。今後、何を優先し、どのように過ごしていきたいかという希望によっては、比較的若い方にも単顆置換術が広がっていっても良いかもしれません。
単顆置換術の流れ
Subvastus アプローチ
2000年代初頭に、人工膝関節において最小侵襲手術(MIS:Minimally Invasive Surgery)という、皮膚を切る大きさを小さく、できるだけ筋肉を切らない方法が流行しました。しかし、傷口を小さくすることが優先され人工関節が適正な位置に入っていないと、痛みが続いたり残ったりする可能性があります。不必要に侵襲を大きくする必要はありませんが、人工関節の手術は、人工関節を正確な場所に正確に設置することが重要です。人工関節が適正な場所に入っていれば、人工関節の機能を発揮しやすく、痛みが少ない長期の耐用性が期待できる、患者さんの満足度が高い手術結果となります。
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