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専門医インタビュー

肩や腕が挙げられないと諦めないでください 治療困難な肩を治療する手術法が進歩し増えています

この記事の専門医

古川 龍平 先生

京都府

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専門分野:肩肘関節外科、スポーツ整形外科
専門医認定・資格など:医学博士、日本整形外科学会整形外科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、臨床研修指導医、京都工学院高校ラグビー部チームドクター

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この記事の目次

腱板断裂修復術について教えてください

関節鏡視下腱板修復術

関節鏡視下腱板修復術

腱板が切れている場合は、放置しても自然治癒することはありません。痛み止めやリハビリなどの保存療法を行いますが、治療を続けても症状が改善しない場合は手術を検討します。手術を選択された場合の多くは、切れた部分を縫合する鏡視下腱板修復術を行います。
断裂の大きさによっては、リハビリなど機能が回復するまでに期間を要す場合がありますが、スポーツや重労働などへの復帰が期待できる手術です。
特に若年の方の場合、時間の経過とともに断裂が拡大するため、放置せずできるだけ早いタイミングで手術を受けたほうが良い場合があります。症状が軽く、日常生活やお仕事に支障がない場合は、断裂の拡大がないか注意深く経過観察していきますが、時間の経過とともに筋肉が痩せてくると、縫合だけでの手術では対応が難しく、大腿筋膜を用いるなど補強の手術が必要となる場合があります。
また、加齢性変化によって腱板が断裂している高齢者の場合、筋肉が痩せてしまった状態や関節の変形が進行してくることが多く見られます。そのような状態で縫合手術を行っても、また切れてしまうことがあります。鏡視下腱板修復術を行っても再断裂のリスクが高いと思われる場合は、リバース型人工肩関節の手術を行うことがあります。

リバース型人工肩関節とはどのような手術なのですか?

従来の人工肩関節は、腱板機能が保たれていないと上手く動かないため、腱板断裂が拡大し、関節の変形が生じている(腱板断裂性関節症)では腱板修復術で治療できない場合が多く、痛み止めやリハビリなどの対症療法しかなく、肩が挙がらなくても仕方がないと諦めている方が多くおられました。しかし、2014年から日本国内でも従来型の構造を反転させたリバース型の人工肩関節が使用できるようになり、腱板機能が破綻している方にとって新たな可能性が期待できる手術だと思います。
リバース型の人工肩関節は、腱板機能が破綻していても周りの筋肉で安定させることのできる人工肩関節です。肩関節の可動域に多少の制限がでますが、頭の上に手を挙げられたり、顔を洗ったり、洗濯物を干すなど日常生活に困らないくらい腕を挙げることができます。また、腱板修復術と比べ、リハビリ期間が短く、早期の社会復帰が期待できます。しかし、もっと大きく肩を動かしテニスや水泳をしたいという場合は、リハビリに時間がかかりますが、人工骨頭置換術と腱板修復術を組合せ、腱板機能を回復させつつ変形した関節を治療する手術を行うことがあります。腱板を断裂して肩を挙げられなくなったとしても、患者さんの求める活動目標に合わせて、その方にあった色々な治療法を提案できることが大切だと思います。

従来の人工肩関節置換術

従来の人工肩関節置換術

リバース型人工肩関節置換術

リバース型人工肩関節置換術

肩を骨折した時にリバース型人工肩関節の手術が行われることがあるのですか?

転倒などにより、上腕骨近位部が複雑に骨折した場合、折れた部分をくっつける骨接合術や骨頭部分を金属に置き換える人工骨頭置換術が行われています。しかし、骨接合術を行っても骨頭壊死(こっとうえし)を起こしたり、人工骨頭の周りの骨がきちんと癒合しないと肩関節の適合性が悪くなったり、肩関節が怪我をする前のように動かすことが出来なくなることがありました。ところが、現在では骨粗しょう症を伴う上腕骨近位部骨折(じょうわんこつきんいぶこっせつ)に対してリバース型人工肩関節置換術が適応できるようになっており、これまで諦めていた肩の動きを取り戻せる可能性があります。


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