専門医インタビュー
東京都
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骨切り術
手術方法は、年齢や軟骨の損傷の程度によって異なってきます。変形性膝関節症の進行度合いは0からⅣまでに分かれ、0が正常膝とされます。Ⅰ~Ⅱなど変形がまだあまり進行していない若い方の場合は、「骨(こつ)切り術」と呼ばれる脚の骨の一部を切って骨の形を変え、膝に荷重がかかる部分を変えて痛みを軽減させる手術が行われることがあります。また、変形がかなり進行しているⅣの場合は、軟骨が擦り減って変形してしまった膝関節の表面を人工関節に置き換える人工膝関節置換術を行うことがあります。人工膝関節の耐用年数は年々延びており最近では20年ほどと言われていますが、あまりにも若い方が手術を受けると、高齢になられてから再手術が必要になる可能性があります。そのため変形度合いだけでなく、年齢や活動性なども考えてより適切な手術法を選択するようにします。
変形性膝関節症のKL分類
人工膝関節全置換術(左)と
部分置換術(右)
人工膝関節置換術は、すり減ったり削れたりしてしまった骨の表面を取り除き、チタン合金や高分子ポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術方法です。人工関節には様々な種類があり、ご本人の膝関節の表面全てを置き換える全置換術と呼ばれるものや、損傷している一部のみを換える部分置換と呼ばれるタイプの人工関節もあります。患者さんの状態を事前に詳細に検査して、どの人工関節を選択したほうがより適した人工関節なのかを入念に確認して使用する人工関節が選択されます。
ナビゲーション
システムの一例
手術前には骨の大きさなどを必ず計測するのですが、奥行きなどが反映されないレントゲン画像だと、どうしても術前に立てたものと手術で計測した時の大きさが微妙に変わることがあります。しかし、現在はデジタルテンプレートと呼ばれる、CT画像からパソコン画面上に三次元の患者さんの骨のモデルを作成することができます。これまでよりも正確に骨の大きさを測ることができるので、その方により適正なサイズの人工関節を選択しやすく、より正確な手術前の準備をすることができます。また、手術中は、この計画通りに手術が行えているかを確認しながら進められるので、より正確な場所に人工関節を設置できるようにもなっています。また、ナビゲーションシステムという術前計画通りに手術が行えているかを教えてくれる装置があります。骨を切る場合は、1度角度が変わっても人工関節の術後成績に大きく影響を与えることがあるので、ナビゲーションシステムを使いさらに正確な手術ができれば、患者さんの術後生活の向上に貢献できると期待しています。
カクテル注射
近年は、患者さんへの身体的負担をできるだけ少なくするために、筋肉を切らない低侵襲手術が行われています。筋肉を切らず、手術の傷跡も10~13センチと以前に比べたらかなり小さくなっているので、患者さんの手術後の回復が以前と比べると早く、入院期間も短くできることが期待されています。
手術後は、手術前に感じていた膝の痛みはほとんどなくなりますが、人工関節という異物が体内に入った事になるので何らかの違和感を感じる方もおられます。手術による痛みは、術後3日くらいまでが痛みが強い時期ですが、手術中にカクテル注射と呼ばれる、痛みや炎症を抑える薬や止血剤などを混ぜたものを関節内に注射することで、術後の痛みを軽減させています。また、中にはIVPCA(intravenous patient-controlled analgesia)と呼ばれる、患者さんご自身が痛みの状況に応じてボタンを押すことにより点滴から鎮痛薬が出て効果的に痛みをコントロールする方法を行うこともあります。痛みの感じ方は人それぞれですが、色々な痛みを軽減させる方法を組み合わせることで、ほとんどの方は1週間もすると痛みがかなり緩和されてきますので、それほど心配する必要はないと思います。
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