専門医インタビュー
年齢や性別、筋力、生活様式なども一人ひとり異なりますので、症状の進行度合いのみで画一的に治療法を決めることは難しく、患者さん個々人に合った治療法が必要になりますが、原則的には進行度に合わせた複数の治療法があります。初期の段階では、生活習慣の改善指導や筋力訓練、痛みを取る薬物療法などの保存療法をお勧めします。炎症を抑える湿布や飲み薬の処方や日常動作の指導、膝にとって重要な筋肉の訓練を行うことで症状を緩和させ、症状の進行を食い止めます。また、関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸を注入したり、水が溜まって炎症がひどく、痛みが強い場合は水を抜いたりステロイド剤を注入することもあります。関節の炎症が進んで関節が変形し、保存療法では十分な効果が得られない場合は手術療法を行います。手術方法には、内視鏡を使った「関節鏡視下手術」、骨の角度を矯正し負荷を軽減する「骨切り術」、変形した膝関節の表面を取り除いて人工関節に置き換える「人工膝関節置換術」の主に3種類あります。
年齢や変形の部位・程度で手術方法に違いがあります。軟骨のすり減りが内側にだけ起こり、O脚が進むことで内側の関節に負担がかかっている場合には、高位脛骨骨切り術を行います。骨の一部を楔形に切除することで体重が外側にかかるようにし、O脚をX脚に矯正することで負担を減らします。比較的若い60代ぐらいまでの方に向いています。
変形がさらに進行して軟骨がほぼ無くなってしまった人や、痛みが激しく日常生活に支障がある場合は、人工膝関節置換術という治療を検討することになります。すり減った軟骨と傷んだ骨の表面部分を取り除き、コバルトクロム合金やチタン合金などの金属と軟骨の役割をする高分子量ポリエチレンからできている「人工関節」に置き換える手術です。特に早く仕事に復帰したい場合や、いつまでも元気に運動をしたい、旅行をしたいというご本人の強い意志があり、リハビリを頑張ることができるという方に向いた治療法だといえます。
人工関節置換術の流れ
人工膝関節置換後のX線
人工膝関節置換術の最大のメリットは、痛みが取れストレス無く歩けるようになることです。膝の変形が改善されることで、背筋も伸び、これまで他の関節にかかっていた負担も軽減され、歩く姿も格段に良くなります。手術時間は1時間半程度です。手術に際しては、麻酔を使用して痛みをコントロールします。全身麻酔だけでなく神経ブロックや局所麻酔を併用することで、術後当日から翌日の痛みが随分軽減されるようになり、より早期にリハビリを開始することが可能になっています。患部を止血して手術をしますので、手術後は特殊な管(ドレーン)で血を抜き、その血は再び患者さんの体内に戻されます。ドレーンを抜いた後には、傷口に適切な処置を施します。入浴については、術後4日程度でシャワーを浴びることが可能で、抜糸後10日程で湯船につかることができます。なお、人工膝関節置換術には医療保険が適用されますが、さらに高額療養費制度の対象にもなっています。
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