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専門医インタビュー

自分の脚で歩き、健康寿命を延ばすためには、人工膝関節置換術はとても有効な治療法です。

この記事の専門医

  • 植田 康夫 先生
  • 一般財団法人 沢井病院 脊椎・脊髄・関節センター長
  • 0742-23-3086

奈良県

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奈良県立医科大学卒業。奈良県立救命救急センター医長、国保中央病院整形外科医長などを経て2019年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本救急医学界認定救急科専門医など。

この記事の目次

術後のケア、リハビリ、退院までの流れを教えてください。

歩行訓練の様子

手術当日は局所麻酔で、翌日からは内服や点滴の痛み止めで除痛をはかり、リハビリに前向きに取り組めるようにしています。手術翌日は、膝に溜まった血液を抜くためのチューブがまだ挿さっているため行動範囲は制限されますが、歩行器を使って自分でトイレに行くことも可能です。翌々日にはチューブを抜き、よほどのことがない限り、80代でも90代の人でも歩行器を使っての歩行訓練を開始します。早い人では、1週間後には何も持たずに歩行訓練ができるようになります。ただし、手術前に杖を使っていた人は、しばらくの間は杖を使って訓練したほうがいいでしょう。
入院期間は個人差がありますが、概ね2週間~4週間です。女性に多い疾患ですから、トイレや入浴ができることに加え、ある程度の家事ができることを確認してから退院してもらうことが多いですね。

人工関節を長持ちさせるポイントはありますか?

まずは過度に太らないこと、体重コントロールが非常に重要です。合わせて、筋力をつけることも大切です。膝は筋肉で押しつける関節ですから、退院後はよく歩いて筋力を鍛えましょう。また、骨と金属との間に緩みが生じないようにするためには、骨密度を保たなければなりません。骨粗鬆症にならないよう、食事にも気をつけてください。なお、正座は禁止しています。最近は膝の屈曲を考慮した人工関節も増えていますが、正座時における金属部分とポリエチレンの接触面積が非常に狭いのが現状です。正座から立ち上がる時の一瞬の力というのはとても大きいので、接触面積が小さいとポリエチレンの一部分に一気に力がかかり、破損の原因となり非常に危険です。靭帯の緩みなどにも影響しますので、避けるようにしてください。
スポーツに関しては、特に禁止はしていません。スポーツをすることで軟骨の役割を果たすポリエチレンが早く摩耗する可能性はありますが、事前に説明し、ご本人が納得された上で自分の生活を楽しむことを選択されたのであれば、それでいいと思っています。実際に、ゴルフや乗馬、登山などを楽しむために手術を受けられる人も沢山いらっしゃいます。さすがに登山は少し心配しましたが、10年たった今でも問題は起きていません。お孫さんとアドベンチャーワールドに行き、イルカと一緒に泳いだ写真を送ってきてくれた患者さんもいますよ。

最後に、膝の痛みに悩んでいる人へ一言をお願いします。

人工膝関節置換術を受ける患者さんの中には、80代以上の人が多くいらっしゃいます。保存療法で痛みをごまかしながら我慢してきて、もう我慢できないという状態で手術を決心されるのですが、そういうケースでは両膝が悪い場合がほとんどです。しかし、80代になると、心臓機能や肺機能が両側同時手術に耐えられない場合もあります。「あと10年早ければ両側同時手術も可能で、70代を趣味や旅行などで過ごせただろうに」と悔しく思うことが度々あります。膝に痛みを感じたら、なるべく早く膝の専門医を訪ね、適切なタイミングで適切な治療を受けるようにしましょう。症例数の多い施設であれば、手術環境も整い、総合的なチーム力も高いと考えられるので、より安心だと思います。治療のタイミングを逃し「寝たきり」になってしまう前に、はじめから手術を否定するのではなく、選択肢の一つとして前向きに考えてもいいのではないでしょうか。


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