専門医インタビュー
埼玉県
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アーチサポートインソール
痛みが比較的軽度の場合、足首のぐらつきを抑える外固定で症状の緩和が期待できます。市販のサポーターの着用でもかなり負荷は和らぎますし、医療用装具であればさらに大きな安定効果が期待できます。靴選びも重要です。歩行時に足首のぐらつきを減らすためには、かかとをしっかり支えてくれる形状のスニーカーなどが望ましいでしょう。靴底と足裏の隙間を埋めるアーチサポートインソールも効果的で、医療用カスタムインソールは「足底装具」として保険適用で作成できます。また最近では、一部の靴屋さんでも保険適用外になりますが作成できるようです。
薬物療法は他関節の場合と同様で、主には炎症止めの飲み薬や湿布が使われます。ただし、こうした薬は足を使っていない状態でも残っている安静時痛を和らげるものであり、歩行時に出現する動作時痛を抑える効果はあまりないと思ってください。
非常に強い痛みが出てしまっているときには、着脱可能なギプスのようなものでしっかりと固定して歩行も最小限に留め、しっかりと足首の安静を保ちながら痛み止め薬で炎症を収めると、症状が落ち着いてくることが多いです。
急性期を過ぎ、痛みが少し和らいできたら、ふくらはぎの筋力トレーニングに積極的に取り組んでほしいと思います。自宅でできるものとして、椅子に浅く座り、両足のつま先を台に乗せて、かかとをゆっくり上げ下げする運動をお勧めしています。慣れてきたら、つま先の内側だけを台に乗せてかかとを上げ下げしてすねの外側を鍛える、または反対に、つま先の外側だけを台に乗せてかかとを上げ下げしてすねの内側を鍛えるといった発展編にも取り組みます。
ふくらはぎ筋のストレッチも大切です。椅子に浅く座って片足を投げ出して、膝をしっかり伸ばした状態で足首をゆっくり上に反らせます。「5秒力を入れたらひと休み」を繰り返し、自分の筋力でふくらはぎを伸ばしていきます。
これらの動きをそれぞれ10回1セットとし、毎日朝・昼・晩3セットずつなど日課として行ってください。装具療法や薬物療法に、こうした運動療法を組み合わせて継続することで、長期にわたって変形性足関節症の進行を抑えられる方も少なくありません。
関節固定術
保存療法を続けても痛みが緩和されない、一時的に良くなっても繰り返し症状が出てくるようであれば、次の選択肢となってくるのが手術療法です。
重症の変形性足関節症の手術というと、従来は関節固定術が一般的でした。この手術法では、破壊・変形が進行した足関節の表面を削り、足首が直角になるように形を整えて関節上下の骨を金具で固定します。骨癒合が完成すれば、関節破壊に伴う痛みは軽快しますし、足関節のすぐ下にある距骨下関節の動きが保たれていれば、日常生活に不自由しない程度の足首の動きも維持されます。安定した成績を持つ手術ではあるのですが、「足首がまったく動かなくなってしまうのでは?」という点に抵抗感を持ち、痛みに悩みながらも手術に踏み切れない患者さんが多かったように思います。
一方、最近日本でも症例が増えてきたのが、関節表面を人工物に置き換える人工足関節置換術です。この手術法では、関節破壊に伴う痛みが軽快するだけではなく、足首の曲げ伸ばしなど動きの改善も期待できます。もともと1970年代から行われていた手術法ですが、2000年前後からインプラントの改良が進み、耐久性が改善されたことで世界的に普及が進んできています。足首が痛くて動かないので階段昇降がつらい、小股でゆっくりしか歩けなくて悩んでいるといった患者さんに応えられる治療法として、一般に認知されるようになりました。
肉体労働やスポーツといった足首に負担がかかる行動を要する活動性の高い患者さんで、関節破壊病変が部分的な場合には、骨格構造の角度調整によって病変部に集中している負荷を足関節全体に分散させる矯正骨切り術が検討されます。また、さらに病変が限局的な場合には、関節鏡視下の部分処置や靱帯再建で症状を改善できる場合もあります。
人工足関節置換術
傷んだ関節の表面を切除し、脛骨側には「脛骨コンポーネント」、距骨側には「距骨コンポーネント」と呼ばれる金属やセラミックでできたインプラントをそれぞれ設置します。脛骨コンポーネントの下表面には、人工軟骨の役割を果たすクッション性のあるポリエチレン部品が装着されます。手術は一般的に2時間半~3時間程度かかり、全身麻酔で行われます。
後期高齢者に対しても、全身状態を評価して問題なければ、特に年齢制限などはありません。ただし、骨粗しょう症の進行にともなう骨質の低下には注意は必要で、インプラント設置時に骨セメントを併用するといった対応も検討されます。
手術に伴うリスクとしては、一般的手術の代表的な合併症である細菌感染が挙げられます。足関節は皮膚に近いこともあり、皮膚上に生存している細菌が人工関節に侵入しないよう、術前・術中・術後を通して慎重な対策を行います。
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