股関節の痛み　我慢しないで　早期の受診で納得のいく治療を

股関節が痛む主な原因は何ですか？

寛骨臼形成不全

健常な股関節は、球状の大腿骨頭（だいたいこっとう）が骨盤のくぼみである寛骨臼（かんこつきゅう）にはまり込む構造になっています。しかし大人になるまでの間に骨盤が十分に発育しないと、屋根の部分のかぶりが浅くなってしまうことがあります。この状態を寛骨臼形成不全（かんこつきゅうけいせいふぜん）といい、股関節の不安定さや関節軟骨へ負担がかかりやすくなるので、年齢を重ねると股関節の軟骨がすり減り、徐々に骨の変形を引き起こす変形性股関節症へと進行することがあります。変形性股関節症は中高年の股関節の痛みや関節の動かしにくさの原因のひとつで、男性よりも女性に多くみられるのが特徴です。

寛骨臼形成不全がある場合、治療を受けなければならないのですか?

変形性股関節症

多くの方は、痛みをがまんして整形外科を受診しないまま過ごしているうちに変形性股関節症が進行し、そこで受診して初めて寛骨臼形成不全があったことに気づくことが少なくありません。寛骨臼形成不全があるからといって、それ自体で股関節が常に痛むようなことはなく、治療を受ける必要はありません。しかし、いつもよりたくさん動いたときに痛みを感じることがあれば、整形外科を受診して診断してもらったほうがよいと思います。痛みの原因が寛骨臼形成不全によるものであることが確認できれば、治療を受けたほうがよいと思います。

大腿骨寛骨臼インピンジメントとは、どのような状態なのでしょうか?

FAI
（大腿骨寛骨臼
インピンジメント）

大腿骨寛骨臼インピンジメント（FAI）も、変形性股関節症のリスク要因と考えられています。FAI は寛骨臼形成不全とは逆に、かぶりが深い場合や大腿骨の形態異常により、脚を動かしたときに骨盤と大腿骨がぶつかり痛みが生じるといわれています。股関節を大きく動かすスポーツをしているアスリートにFAI があると、動きの端々で痛みを感じパフォーマンスが落ちてしまうことがあります。しかしアスリートなど激しいスポーツをされている方だけでなく、レクリエーション程度の運動でも同様の症状に悩まされている方も少なくありません。

寛骨臼形成不全や大腿骨寛骨臼インピンジメント（FAI）に有効な治療法を教えてください

寛骨臼回転骨切り術

寛骨臼形成不全には、「寛骨臼回転骨切り術（かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ）」という手術があります。手術によって骨盤のかぶりを正常に近い形に整え股関節の動きが安定すれば、軟骨がすり減るスピードが遅くなり、変形性股関節症の進行を遅らせることが期待できます。ただし股関節のかぶりは浅いけれども骨の変形はなく、軟骨がしっかり残っている方が適応になります。
一方のFAIは、多くの場合はリハビリテーションが効果的です。しかしFAI によって寛骨臼の縁に取り巻いている股関節唇（こかんせつしん）という組織が傷んで痛みがあるケースでは、関節鏡を用いて手術が行われることがあります。