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専門医インタビュー

適切な治療で痛みを解消 人工膝関節置換術で生活圏を広げて、より前向きな人生を!

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兵庫県

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日本整形外科学会認定整形外科専門医

この記事の目次

手術に年齢制限はありますか?また、人工関節の耐久性についても教えてください。

人工膝関節置換術の風景

現在、手術を受ける年代で一番多いのは70代ですが、最近は80代も増えています。身体状態が良ければ90代でも問題ありません。実際に私が手術を行った最高齢の人は92歳です。それだけ活動性の高い高齢者が増えてきたということでしょう。一方で、50代~60代の患者さんも増えています。これまでは「活動レベルの高い世代では、再置換の可能性が出てくるため手術はまだ早い」という考え方から、人工膝関節置換術の手術年齢は65歳以上といわれてきました。しかし現在は、手術手技やインプラントの材質などが著しく進歩しているため、50代~60代で手術を受けても、そのまま人生を全うできる可能性が出てきました。人工膝関節の20年間の生存率は、85%~90%といわれています。もちろん、患者さんの活動レベルや骨の質などの要因によって異なってきますが、耐用年数に大きく影響するのはインプラントの設置位置や角度の正確さでしょう。経験豊富な術者が適切に設置することで、30年持つ可能性も十分にあると思います。なお、再置換手術の成績も非常に良くなっているので、定期的な診断を受けながら、痛みや緩みといった不具合が生じた場合には、早めに再置換術を行うというのも一つの選択肢だと思います。

術後のリハビリと退院までの流れを教えてください。

人工膝関節置換術のクリニカルパス

入院から退院までは、病院で作成しているクリニカルパスに沿って診療が進んでいきます。クリニカルパスとは、治療や検査の標準的な経過を説明するため、入院中の予定をスケジュール表のようにまとめた入院診療計画書です。このクリニカルパスを踏まえた上で、術後のリハビリは、担当の理学療法士が患者さんの家庭環境や生活様式などをしっかりと把握した上で、その人にあったプログラムを作成します。入院期間は3週間~4週間です。早い人では手術翌日に車椅子での移動が可能です。術後2日目~3日目には歩行器による歩行訓練を始め、1週間後からは杖歩行を開始し、歩行距離や歩行スピードを徐々に上げていきます。3週目~4週目で、手すりや杖を使って階段昇降ができるようになるのが退院の目安です。

術後2~3日目から歩行器で歩行訓練を行います

リハビリには患者さんの前向きな意志が大切ですから、不安にならないための精神的なフォローアップも重要です。確実に回復しているということを意識してもらうため、定期的に歩行スピードや筋力を測り、患者さんに確認してもらっています。しかし、手術後は筋力がかなり落ちるため、術前の状態に戻るには1ヵ月以上かかるのが一般的です。日常生活の活動性を高めるためには、術前の状態からさらに筋力アップを図らなければいけないので、当院では退院後3ヵ月~4ヵ月は、週に2回程度の通院リハビリを実施しています。その期間の家族の受け入れが難しい患者さんの場合は、退院後、リハビリ専門病院に転院してもらってから、ご自宅に帰っていただくこともあります。

通院リハビリではどのようなことを指導されますか?

まずは、通院している時だけがリハビリの時間ではなく、自宅にいる時の運動や散歩などもリハビリの一環であり、意識して日常生活を送ることが重要であることを理解してもらいます。また高齢者の場合は、膝関節だけでなく、股関節や腰椎が悪い方も少なくありませんので、股関節や腰に負担のかからない歩き方なども指導します。患者さんによく見られるのが脚を引きずる歩き方ですが、転倒の危険性が高まるので、膝をしっかり上げて歩くよう訓練を行います。転倒すると活動力の低下につながる場合もありますし、何よりも骨折の危険性があります。また、人工関節の緩みや破損にもつながりかねません。くれぐれも注意するようにお願いしています。杖を使う時と使わない時、それぞれの正しい歩き方を覚えることも重要ですね。


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