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専門医インタビュー

股関節の痛みが強く生活に支障が出てきたら、人工股関節置換術を行うタイミングです

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東京都

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北海道大学医学部卒業後、東京大学整形外科入局。以後、国立身体障害者リハビリテーションセンター、都立広尾病院などの病院に勤務、東京大学医学部附属病院整形外科・脊椎外科病棟医長・同特任講師などを経て、現職に。日本整形外科学会、日本股関節学界、日本人工関節学会、関東整形災害外科学会、日本リハビリテーション学会所属。変形性股関節症の会「のぞみ会」電話医療相談専門医

この記事の目次

手術を受けた患者さんの様子やリハビリ~退院の流れについて教えてください。

平均して1週間で病棟内を歩ける
ようになります

人工股関節置換術の目的は痛みを取ることにあります。片側の股関節の痛みが強いと歩くときに痛みを庇ったり、痛い方の脚が短くなってしまったりするため、歩行時に体が揺れたり、身体が傾いた状態で脚を引きずったりするようになってしまいます。人工関節にして痛みが取れると、その「跛行(はこう)」といわれる歩き方がなくなり、バランスの良い動きができるようになります。痛みが取れるだけではなく、普通に動くことができるようになることを喜ばれる人が多いようです。術後は、血栓症を起こさないようにするためにも、できるだけ早くからリハビリを開始します。安静にして寝ているよりも、早くから動きだす患者さんの方が、回復が早いのは明らかです。手術の翌日は、歩行器につかまってトイレまで歩くのが目標です。2日目からリハビリ室に通い、歩行訓練を開始します。早い人は3~4日、平均して1週間で病棟内を歩けるようになります。杖を使ってでも自分の脚で歩いて動くことができる、というのが退院の目安になります。自宅に階段がある場合は、階段昇降の練習をして自分でできるようになってから帰ってもらいます。術後の回復度合は患者さんの術前の歩行能力によって異なりますが、通常2週間で退院していきます。

術後、患者さん自身で気をつけなくてはいけないことありますか?

患者さんに最も注意してアドバイスしているのは「筋力をつけてください」ということです。人間の動力は自分自身の筋力ですから、できるだけ筋力を落とさないためにも、自宅でできる運動を続けていただくよう、お願いしています。ただし骨折の原因となるため、転倒だけには気をつけてください。その他は、「基本的な生活動作はどんどんしてください」と説明しています。スポーツについては、飛んだり跳ねたりする衝撃の強い運動や登山、スキーなどはあまり勧めることはできませんが、ウオーキングやハイキング、ゴルフ、テニスなどは、皆さんやっていますね。

中殿筋のトレーニング

脚を伸ばしたまま、5秒間上げてからゆっくり下します(左)
股関節に力を入れて、片脚をゆっくりと開いて戻します(右)

個人差はありますが、半年から1年くらいすると人工関節にしたことも忘れてしまうくらい、動きがスムーズになるでしょう。退院後は、腫れや痛み、人工関節に緩みはないかなど、定期的に診断を受けて人工関節の状態を点検・チェックをすることが大事です。最近は、より活動的な生活をしたい、できるだけ身の回りのことが自分でできるようにと、積極的に人工股関節置換術を望む人が増えています。人工関節を入れるのであればできるだけ早い段階で、入れないのであれば他の治療法で痛みをコントロールするなど、よりよい生活を送るためにも患者さん自身の選択が重要になってきていると感じます。

患者さんへのメッセージはありますか?

体格的な要因に加えて、年齢的な要素が大きな比重を占めている変形性股関節症。長年、腰痛に苦しんでいるけれども中々治らない人で、脚の付け根や股関節周囲に痛みがあるようであれば、股関節の変形を疑ってみる必要があります。股関節を専門にしており、多くの患者さんを診ている経験豊富な整形外科医に相談して、まずは痛みの原因を見極めてもらいましょう。変形性股関節症は、手術が必ず必要な病気ではありません。早期に気づいて、日頃の生活動作に気を配っていれば、進行を予防することも可能です。そして症状が強くなる前には、病状の変化を早期に発見するためにも、定期的に通院することを勧めます。もし、痛みが強くなってしまい日常生活に支障が出てきたら、人工股関節置換術という選択肢を考えてもいいのではないでしょうか。今は、患者さんにあった手術法やインプラントを選択する、いわゆる個別化医療が進んできています。手術を怖がらずに、納得のいくまで相談してみてください。


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