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専門医インタビュー

手術とリハビリが一体化した治療でこそ変形性膝関節症は完治します

この記事の専門医

山梨県

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東京医科大学大学院修了。米国ロックフェラー大学留学。帰国後、東京医科大学整形外科助手を経て、貢川整形外科病院に勤務。2007年同院院長に就任。専門は脊椎脊髄疾患。高齢社会の中で、頸椎から腰、関節など、患者さんの全身をトータルで診ることができる医師を養成中。

この記事の目次

手術前に何か準備することはありますか?

術前には三次元動作解析システムで歩容を確認

まず、糖尿病や高血圧、心不全などの内科的疾患が隠れていないか、全身麻酔をかけても問題ない健康状態であるかを事前にしっかりと調べます。内科と麻酔科からOKがでれば、初めて手術の日にちが決まります。その上で、自己血を400~800cc採取します。入院は手術の前日です。まずはリハビリ室で、術前の歩行の様子や筋肉の状態を記録します。身体運動中の関節の動きや筋肉の動き方などを計測するための装置(三次元動作解析システム)を付けて実際に歩行を行い、どういう歩き方をしているのか・どこの筋肉が弱っているかなど、手術前の歩容を視覚的に確認し記録します。もうひとつ、重心動揺計を用いた検査で、身体の重心の傾きを調べます。悪い膝をかばっているために、どのくらい・どういう風にバランスが崩れているかを記録します。術前からこれらのシステムを駆使し、患者さん個々のデータを記録することで、術後のリハビリ方針を設計するのは、当院の大きな特徴です。患者さんと一緒に記録した三次元データを見ながら、姿勢や正しい体重の乗せ方などを視覚的に指導します。漫然と誰にでも同じようなリハビリを指導するのではなく、個々の術前の状態に基づいたサポートとアドバイスを行うことで、より回復の効果を高めることができると考えています。

手術の流れについて教えてください。

手術室には画像モニタリングシステムを設置し、手術状況をリアルタイムに共有

人工膝関節置換術は、変形した膝関節の表面を取り除いて人工の関節に置き換える手術です。虫歯ができたら、歯医者さんで治療します。歯が欠けていたら、詰め物をしたり銀歯を被せたりしますが、膝関節も同じです。傷んでいる関節の損傷面を削って取り除き、代わりとなる人工関節を被せて固定します。手術は、術中に雑菌や埃などが患部に触れないように、バイオクリーンルームという清潔な手術室で行います。手術は概ね1時間前後、早ければ40分くらいで終了します。手術後は、病棟のベッドに移る前に血圧計などのモニターをつけたまま、24時間手術室の隣のリカバリー室で管理されます。なお、このリカバリー室と手術室の距離が短いことが、安全のために大事だと考えています。リカバリー室は、医師や看護師が常に詰めている部屋とも隣接しているため、始終何人もの目があり、万が一患者さんの様態が急変してもすぐに対応することができます。これは、整形外科の単科病院だからこそできることだと思います。

手術が効果を発揮するには、リハビリがやはり重要なのでしょうか?

リハビリテーション室の風景

術後は、手術の翌日からリハビリをスタートします。具体的には、ベッドの上で手・脚を動かすことから始めて、患者さんの筋力によって多少異なりますが、早ければ5日目には一人で歩いてトイレまで行けるようになります。その後、一本杖を使い自力で歩く練習や階段昇降訓練などを行い、自宅に帰ってごく普通の日常生活ができるようになったら、退院となります。入院期間は平均2週間半ほどでしょうか。なお、手術がどんなに上手くいっても、その後に適切なリハビリが行われなければ、その人の手術は成功したとはいえません。膝の痛みを本当に治すためには、医師と理学療法士や看護師などが、一人ひとりの患者さんにどういう問題があるのかといった情報を共有し、手術とリハビリを一体化して治療に取り組む必要があります。例えば、手術で膝の内側の靭帯が緩いことが分かったという連絡が医師から入っていれば、リハビリでその弱い部分を硬くするよう治療することも可能です。患者さんの情報共有をスムーズにするためにも、当院では入院から退院まで同じ理学療法士や看護師が指導する「担当制」を導入しており、スタッフがチーム一丸となって意見交換を行いながら、現在できうるより良い医療の提供を目指しています。


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