メニュー

専門医インタビュー

人工関節置換術で元気に歩ける幸せを

この記事の専門医

鈴木 誠也 先生

東京都

プロフィールを見る

日本整形外科学会専門医

この記事の目次

手術の流れについて教えてください。

まず、インフォームドコンセントという術前の説明をします。手術の目的、手術によって期待できる効果、手術方法、どんな素材のインプラントを入れるか、自己血貯血(自分の血液を前もって採血して保管しておく)のこと、感染症などのリスクの話、水虫や虫歯があったら治療しておくこと、術後リハビリで行う体操の練習のお願いなどです。
そして、手術を受けることが可能かどうかを調べるために、全身状態の評価をします。これが手術の予定日の4週間以内に行う術前検査と呼ばれるものです。その上で、心臓が悪ければ循環器、腎臓が悪ければ腎臓内科、専門科のドクターに診てもらって、これなら乗り切れるかどうかを評価して手術の決定をします。

インフォームドコンセントはこちらをご参照ください

リスクにはどんなものが考えられますか?

TKAは現在では十分に安全な手術となっています。それでも、手術である以上、絶対に安全だとは言い切れません。合併症や感染症を避けるために細心の注意を払っていることはもちろんですが、可能性は低いものの起こりうる危険性について知っておいていただくことは大切です。
人工関節は感染(化膿)が起きると、治るのに長期間の治療を要します。手術で切開した部分に感染が起きないよう、無菌手術室で手術を行い、抗生剤を予防投与して対処します。
虫歯や水虫なども放置しておくと、感染部位から人工関節へ感染が波及する恐れがあるので、できるだけ手術前に治しておくようお願いしています。
また、血栓症といって、静脈血管内に血の塊(血栓)ができることがありますが、その血栓が血流にのって体内を移動し、肺梗塞や肺塞栓を起こすことがあります。肺梗塞や肺塞栓は重症化する場合が多いので、手術後は足の裏を断続的に圧迫する器械をつけたり、血栓予防薬や弾性ストッキングを履くといった方法で血栓ができるのを予防します。

手術後の経過について教えてください。

キズは通常、2週間ほどで治ります。手術直後は2、3日痛みが強いので、背中から硬膜外腔にカテーテルを入れて、そこから持続的に痛み止めを注入します。これで、かなり痛みは軽減されているはずです。ただし、血栓症や塞栓症になったことがある方、脊椎の手術を受けたことがある方は、カテーテルを使えないので、静脈点滴で持続的に痛み止めを入れることになりますが、これはやや効き目が弱くなります。
痛みに対する個人差もありますが、変形の程度や状態が悪いと、骨を切る範囲も大きくなるので、よけい痛いと思うかもしれません。
手術後の出血が膝関節内に貯まらないようにするチューブを入れますが、出血が止まったら抜きます。チューブが抜けたら、CPMという器械に膝をのせて自動的に膝の曲げ伸ばし運動を行います。その後、理学療法士とともに筋力をつけ、膝を曲げるリハビリ、立ち上がりや歩行練習を行います。
手術後2~3週間の入院(両側の場合は、さらに1週間)で、杖を使って歩いて退院という運びになります。

傷口はどのくらいの大きさになるのでしょう?

おおむね10cm程度、手術時間(メスを入れてからキズを閉じるまで)も1時間以内に終了です。
患者さんにとって美容的にも傷口が小さい事は大切ですが、特に重要なのは、筋肉や腱への侵襲をできるだけ少なくすることです。術後の痛みの軽減や筋力の回復などが早まり、患者さんの負担が軽減されます。
ただし、患者さんの体格が大きい場合や膝の変形が進行している場合などは、15cm‐20cm程度へ傷口の大きさは変わります。傷口が小さすぎると、手術操作が難しくなるため、無理をせず、且つなるべく小さい侵襲で行うことが重要です。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop