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専門医インタビュー

"膝の痛み"を我慢しないで ~変形性膝関節症の治療と人工膝関節置換術~

この記事の専門医

木村 正一 先生

北海道

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専門: 膝関節外科
資格: 日本整形外科専門医、日本整形外科認定スポーツ医

この記事の目次

人工膝関節置換術のリスクについて、教えてください。

傷みの進行が比較的初期で、関節の片側の軟骨のみがすり減っていて反対側のすり減りが少ない場合には、膝関節の一部を人工関節に置き換える人工膝関節単顆(たんか)置換術(人工関節片側置換術、ともいう)という手術法を用いることもあります。単顆置換術では通常の人工関節に比べ約半分の大きさの人工関節を用いるため、一般的に皮膚の切開や骨の切除量が少なくなります。

人工膝関節置換術は、全国で年間約7万件も実施されているポピュラーな手術療法ですが、リスクやデメリットもあります。まずは、人工関節の耐久性です。人工関節の金属部分は擦り減ることはないのですが、ポリエチレン部分が術後、使用と共にすり減っていきます。このポリエチレン部分がすり減ってしまうと、人工関節の「入れ替え」をしなければなりません。この入れ替え手術のことを「人工膝関節再置換術」といい、初回の人工膝関節置換術より大変な手術となります。ただ、以前と比較して今の人工関節は品質が向上していますので、そう簡単には入れ替えるということはありません。概ね15~20年は持つと考えて良いでしょう。
また、膝の曲がりのいい患者さんの場合、膝関節の曲がり具合が悪化する可能性があります。膝の場合、人は0~150°まで曲がることによって正座などをすることができます。多くの患者さんは、変形性膝関節症によりその曲がりが悪くなるため、手術を施すことによって術前以上に曲がるようになるのですが、元々正座ができるような曲がりのいい方によっては、手術を受けることによって曲がりが悪くなり、正座ができなくなることもあります。
その他、人工膝関節置換術のリスクとしては、合併症が考えられます。合併症は、手術には必ずつきまとうリスクで、完全にゼロにすることはできません。具体的には、手術の際に、患部に細菌が入り、感染を起こします。感染が起きると、一般的に、患部の腫れ、痛み、発熱といった症状が伴います。合併症にかかると、一度入れた人工関節を、もう一度取り出して細菌を殺す手術を行う必要があります。

患者さんの術後の様子とリハビリについて教えてください。

えにわ病院のスタッフによるリハビリの様子。患者さんの様子に気を配りながら、少しずつ膝をを曲げていきます。

通常、術後2~3日で歩く練習を始めます。患者さんは、術後2日間くらい痛みがありますが、すぐに痛みは取れていきます。手術後は3週間ほど入院し、リハビリを行います。主なリハビリ内容は、膝を曲げるのと歩く訓練です。その他、膝の周りの筋肉を鍛える筋力訓練や、階段の上り下りなどの日常生活動作の訓練も行います。やはり筋肉を切っていますので、最初は痛くて、どうしてもすぐには曲げることはできません。理学療法士が患者さんの足を触って、声をかけながらじわじわと毎日5、10°と曲げていきます。
リハビリ用に様々な機器が出ていますが、重要なのは、理学療法士という「人」によるリハビリテーションだと思います。術後、患者さんの状況を最も良く把握しているのは理学療法士であり、患者さんがリハビリに継続して取り組めるように信頼関係を作り、動作ができた時にほめたり励ましたりするのも理学療法士です。当院も実践していますが、このように機器に頼らないリハビリが重要だと考えています。

術後の日常生活において、特に気をつけることや心がけるべきことは何ですか?

人工膝関節置換術を受ける患者さんの多くは、ある程度の年配の方なので、そういう方々が楽しまれるレクリエーションで、術後、やってはいけないことというのは、基本的にありませんし、問題なくできます。旅行に行くとか、卓球やパークゴルフをやるとか、患者さんが自分でやりたいと思ったことに取り組まれたら良いと思います。ただし、重労働や肉体労働、高いところから飛び降りるなどの動作は、少し難しいかもしれません。その他、走る際には気を付けてください。ランニングには、体が空中に浮いている時間がありますが、着地する際に全体重が膝にかかります。着地した瞬間は、体に負担がかかりますので、積極的に走るというのは避けた方が良いでしょう。散歩や、プールの中で歩いたり走ったりするのは、健康にも良いため、ぜひ進んで取り組んでください。

現在、膝関節の痛みに悩んでいる方へアドバイスをお願いします。

今は、整形外科はかなり細分化されています。私の場合なら膝しかできないし、ほかにも股関節や肩、肘、手など、各部位に対し、それぞれ専門の先生がいらっしゃいます。みなさん、それぞれの得意分野があるので、膝の場合は膝の専門医に相談してください。その上で、自身の痛みや不安などについて、じっくりと話すことができる施設が良いでしょう。まずは、お近くの整形外科にご相談ください。


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