専門医インタビュー
福岡県
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人工膝関節置換術は骨を切るので、手術中、ある程度出血するものの、止血剤や止血器械をして、できる限り少ない出血量にとどめます。手術直後、痛みが強い場合は、大腿神経ブロックの麻酔薬をチューブで持続注入したり、複数種類の鎮痛剤を使用したりして、術後の痛みをコントロールをすることもあります。以前は、手術後の痛みは我慢するのが当たり前でしたが、今はあまり痛みを感じずにスムーズにリハビリを進められるような取り組みがされています。
ベッド上でずっと安静していると筋力がみるみる落ちていく上に、関節も硬くなってしまうため早期に開始するのが重要です。一般的に翌日よりリハビリを開始し、車椅子に乗ったり、膝を曲げたりといったところから始めます。本格的に歩き始めるのは手術後2~3日目からで、最初は歩行器などのサポート器具を使用しながら歩行訓練を行います。安定して一人で歩行でき、階段昇降がスムーズにできるようになるまでリハビリを進めます。患者さんごとのリハビリの進行状況にもよるものの、入院中のリハビリ期間はだいたい2~3週間程度になることが多いです。
運動については、サッカーのようなコンタクトスポーツや、マラソンのように繰り返しの負荷がかかるようなものは避けたほうがいいでしょう。それ以外には特に制限はありません。人工膝関節にしたことで活動範囲が広がり、旅行に行けるようになったという方も大勢いるので、積極的に動いていただきたいと思います。さらに、定期検診も大切です。人工関節の場合、受診のタイミングを自覚症状に頼っていると、対応が手遅れになってしまうことがあります。特に症状がなくても、年1回は定期検診を受け、異常の有無を確かめてもらってください。また、人工膝関節への細菌感染を防ぐために、むし歯や水虫などの感染症対策もしっかり行う必要があります。
あとは、人工膝関節は金属製の部品も含まれるので、飛行機に乗る際、空港の保安検査場で金属探知機に反応することがあります。その場合は、人工膝関節が入っていることを係員に説明すれば、問題なく通過できますよ。
膝に痛みがあるようなら整形外科を受診して、原因が何かを正しく知ることが重要です。整形外科で変形性膝関節症と診断されたからといって、いきなり手術を勧められるようなことはまずありません。基本的には保存的治療から始まり、一定期間それを続けても効果が期待できない場合は手術を勧められるという流れになると思います。人工膝関節は、必ず受けなければ死んでしまうというような手術ではないものの、手術を受けてみると、「手術してよかった」、「もっと早く受ければよかった」という人が多くいらっしゃいます。人工関節の手術はどんどん進歩しているので、痛みが強いようなら、まずは主治医の先生と相談してみてください。案ずるより産むが易しで、きっとよい結果が得られると思います。
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