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専門医インタビュー

大切なのは痛みの原因の診断。症状が初期であれば治療の選択肢は広がります

この記事の専門医

谷口 眞 先生
  • 谷口 眞 先生
  • AOI国際病院 関節センター長
  • 044-277-5511

神奈川県

吉田 拓 先生
  • 吉田 拓 先生
  • AOI国際病院 関節センター
  • 044-277-5511

神奈川県

この記事の目次

変形性関節症にはどんな治療が行われますか?

大腿四頭筋と中殿筋

谷口 一般的には、保存的な治療から始まります。膝も股関節も痛みが強い場合は鎮痛薬を服用します。さらに、関節内へのヒアルロン酸注射が痛みの改善に役立つことがあります。また、筋力低下がみられる場合は、関節周囲の筋力強化にも取り組んでいただくこともあります。特に、膝関節なら太ももの前側にある膝を安定させる筋肉である大腿四頭筋、股関節ならおしりにある股関節を安定させる筋肉である中殿筋を鍛えるといいでしょう。

吉田 変形、損傷の程度が軽い人は理学療法士のもとで関節周囲の硬くなった筋肉のリラクゼーションやストレッチ、歩き方の訓練、体幹の強化などを行い、そのやり方をご自身で学んでいただいて自宅でも継続して行うようにしてください。次のステップとして、膝関節なら半月板、股関節なら股関節唇という軟部組織の内視鏡治療を行います。その他に、保存療法としてサポーターや足底板などの装具療法があります。整形外科にかかるタイミングが初期であればあるほど、治療の選択肢は広がると思っていいでしょう。

どのような状態になったら人工関節にしたほうがよいのでしょうか?

人工膝関節部分置換術後のレントゲン

人工膝関節部分置換術後
のレントゲン

谷口 痛みが改善せず、生活に支障が出ている、レントゲン上も変形が進んでいるようなら、人工関節の手術を考えてもいいと思います。例えば、近所のコンビニにも歩いていけなくなっているというように、膝でも股関節でも“痛み”によって歩ける距離が短くなっていたら、人工関節を考える時期だと思います。
患者さんが人工関節を選択するメリットは、手術を乗り越えれば、これまでの痛みがすっきりと改善し、痛みに悩む生活から開放されることだと思います。もちろん、いきなり手術と言われたら躊躇するでしょう。通院で保存療法をしっかりと受け、医師と信頼関係ができた上で手術について考えてみることをお勧めします。

吉田 人工関節の手術をいつするかというのは、あくまでも患者さんがご自身で決めることです。ただ、比較的早く変形が進行してしまう可能性がある患者さんに対しては、積極的に人工関節の手術を勧めることもあります。それは、変形性関節症は進行性の病気だからです。いつか手術をするのなら、筋肉や骨がしっかりしていて、変形が進行してしまう前に人工関節にしたほうが、手術後の患者さんの満足度は高くなることが多いという一面もあると思います。

人工関節では、MIS(最小侵襲手術)という手術法があるのですか?

人工膝関節置換術後のレントゲン(両脚)

人工膝関節置換術後のレントゲン(両脚)

谷口 MIS(最小侵襲手術)というのは、筋肉などの組織をなるべく傷つけず、正確に人工関節を設置する手術法です。股関節の場合だと筋肉と筋肉の間から侵入し、人工関節を設置します。膝の場合も同様で、できるだけ筋肉などの組織を温存します。筋肉を切離しない分、患者さんの体への負担が少なく、術後の回復が早いと言われています。

吉田 膝関節は複雑な関節だけに、傷の大きさにとらわれるよりも、人工関節を正確に設置することを重要視しています。MISというと傷口が小さくてすむと思っている人も多いようですが、大切なことは、筋肉などの組織をなるべく傷つけずに、正確に人工関節を設置することです。正確に設置することで膝の曲がりなどの機能再現性が高まり、人工関節の耐久性も向上する可能性があります。

人工関節の手術には、年齢の制限はありますか?

人工股関節置換術後のレントゲン(両脚)

人工股関節置換術後のレントゲン(両脚)

谷口 手術に耐えうる健康状態であれば何歳になっても手術を受けることができます。なかには90代でも人工膝関節置換術を両足同時で行い、術前は痛みで数メートルしか歩けなかったのが、術後は自分の足で歩いて外出までできるようになったことがありました。その人は、心配される合併症もなく、ある程度筋力もあったので、人工関節のメリットが享受できたのだと思います。

吉田 一方、近年では、若い年齢で人工関節置換術を行うこともあります。例えば、30代の人で股関節が大腿骨頭壊死の状態にあり、壊死の範囲が広く、人工関節しか選択肢がないような状態にあるなど、年齢だけでなくご自身の状態によって手術法を選択することもあります。人工関節の性能が向上し、手術手技も進化したことにより、年齢の若い人でも人工関節を選択する可能性がでてきたと考えています。いかなる世代であっても痛みのサインを逃さずに、早めに受診することが大切だと思います。


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