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専門医インタビュー

リバース型人工肩関節の症例が増えています。早めに相談を!

この記事の専門医

谷口 昇 先生

鹿児島県

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専門分野:肩関節外科、肘関節外科、リウマチ外科
1995年 鹿児島大学医学部卒業、1999年 鹿児島大学医学部整形外科医員、2015年 宮崎大学医学部整形外科講師、2017年 同准教授、2018年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科整形外科学 教授

この記事の目次

人工肩関節置換術、リバース型とはどのような術式なのでしょうか。

リバース型人工肩関節

リバース型人工肩関節

従来の人工肩関節

従来の人工肩関節

人工肩関節置換術とは、広範囲腱板断裂や変形性関節症、関節リウマチによって変形した肩関節の表面を取り除いて、人工関節に置き換える手術です。広範囲腱板断裂に対する従来の人工関節は、痛みを緩和できたとしても肩の動きそのものの回復は十分とはいえませんでした。しかし、日本でも2014年から新しいタイプのリバース型人工肩関節が使えるようなり、肩の機能回復がさらに期待できるようになりました。手術症例数も年々増えています。日本整形外科学会承認のガイドラインによると、リバース型人工肩関節置換術が適応されるのは、原則70歳以上で、広範囲腱板断裂または腱板断裂性関節症と診断された患者さんに限られます。また、執刀する医師にも「肩関節手術100例以上の経験を有するもの。腱板断裂手術50例以上および人工肩関節全置換術もしくは人工骨頭置換術を併せて10例以上」、「日本整形外科学会の定める講習会を受講している」などの基準が設けられています。

入院から手術、退院までの流れについて教えてください。

人工肩関節置換術後のレントゲン

人工肩関節置換術後のレントゲン

まず外来で必要な検査を行い、手術に適合すると判断された場合に限り、手術の予約をさせていただきます。高血圧や糖尿病、脳梗塞などの既往症がある場合は、かかりつけ医に連絡を取る場合もあります。術前には医師から手術の目的や手術方法などについて説明(インフォームドコンセント)があります。また感染など輸血の合併症を考慮して、術前に自分の血液を保存する自己血貯血を行う場合があります。肩関節の手術は除痛のための伝達麻酔と全身麻酔を併用し、ビーチチェアポジションで行います。人工肩関節置換術にかかる時間はおよそ2-3時間ですが、患者さんの肩の状態によって異なります。手術後は装具を装着し、合併症がなければ翌日から離床し、リハビリを開始します。入院期間の目安は約4週間です。経過が順調であれば早期退院も可能ですが、ひとり暮らしで身の回りのことを全て自分でしたり、自宅からリハビリ通院するのが大変な場合もあります。そのような方は、引き続きリハビリ専門の医療機関で入院を続けられる方もいらっしゃいます。装具が外れると車の運転も可能になりますので、その段階で退院の許可を出しています。

リハビリテーションはどのように行われるのでしょうか。

合併症などがなければ、手術の翌日から人工肩関節周囲の筋肉を緩めたり、むくみを予防するためのリハビリを開始します。術後の痛みは神経ブロックによって軽減されていますが、必要に応じて内服薬を使用します。
リハビリでは理学療法士から機能回復に必要な運動のやり方について指導があります。痛みやこわばりが取れれば、主治医の指示に従って、入浴などの日常生活動作を行うことができます。なお座った状態で腕を挙げる動作は、装具が外れてから行います。
また肩甲骨の動きが悪く、肩の筋肉や腱がこわばっている方、筋力低下がみられる方に対しては、手術前からリハビリを始めていただく場合があります。

リハビリの重要性について教えてください。

谷口 昇先生

リハビリは非常に重要です。ただし、リハビリは諸刃の剣であり、焦って早く動かそうとすれば縫合した腱や筋肉が切れてしまいますし、そこを保護するあまりに動かすのを遅らせれば今度は硬くなってしまいます。リハビリは少しずつ負荷を大きくしながら、バランスよく段階的に進めていくことが大切です。主治医と理学療法士が密に連絡を取って、患者さんの状態を把握しながら進めていくため、一人ひとりプログラムは異なります。そのため、同時期に同じような手術をした場合でも、必ずしも同じリハビリを行うわけではありません。一人ひとり状態が違うので、それに合わせたプログラムを立てています。周りの人を気にしたり、「自分はあの人に比べて遅れている」と焦ったりせずに、主治医や理学療法士の指導に基づき、リハビリに励んでいただきたいと思います。
まずは主治医や理学療法士とよく話し合って、リハビリのゴールを設定しましょう。例えば大工さんであれば、重いものを頭上に持ち上げる動作が必要になりますし、高齢者の方であれば、日常生活動作で十分であるかもしれません。求めるゴールによって、リハビリの内容は変わります。ゴールを明確にすれば、日々のリハビリにおいて自分が今どんな段階にあるのか、自分自身で理解することができるはずです。


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