メニュー

専門医インタビュー

股関節の痛みはあきらめずに受診を! 人工股関節の手術は日々進歩しています

この記事の専門医

金治 有彦 先生
  • 金治 有彦 先生
  • 藤田医科大学 ばんたね病院 整形外科 臨床教授
    藤田医科大学医学部 整形外科機能再建学 臨床教授
    慶應義塾大学 整形外科 特任教授
  • 052-321-8171

愛知県

プロフィールを見る

専門分野:股関節外科、小児整形外科、股関節鏡視下手術
資格:日本整形外科学会認定整形外科専門医

この記事の目次

どのような患者さんが人工股関節を選ばれていますか?

人工股関節の一例

人工股関節の一例

早ければ40代後半ぐらいの人から手術を行うことがあります。40~50代は働き盛りの世代なので、早く痛みを取って、活動的な生活や仕事に戻り、趣味やスポーツまで楽しみたいという希望を持った人が多い印象です。股関節に違和感のない質の高い生活が、その後数十年間に渡って続くことが求められています。
そのような意味でも、若い世代の人工股関節置換術は、従来主流だった手術とは異なるものとして考えなければなりません。40代で手術をするというのは、人生100年時代と言われる今、残りの人生をアクティブに暮らしながら50年近くその機能を持たせる必要があるということです。当然ながら、それだけのよりきめ細やかな手術が求められてきます。

手術はどのように行いますか?

前外側アプローチ

前外側アプローチ

手術にはさまざまな進入方法(アプローチ)があり、例えて言うなら富士山の頂上にどちらから登るかという考え方に似ていて、それぞれ長所短所があります。その中で、近年徐々に主流になってきているのが前外側アプローチです。手術中、患者さんには仰向けで寝てもらい、太ももの前外側を切開して進入します。このアプローチでは、骨盤側の人工股関節が正確に設置しやすかったり、術後後方への脱臼リスクが低いなどのメリットがあります。
股関節は厚い筋肉などに覆われていますので、傷口を小さくし、かつ多くの軟部組織を残して手術しようとすると、直視下に手術する部位が見えにくくなるのも事実です。そうした中、手術をより安全に行うためにコンピューターを使ったナビゲーションシステムなどの補助ツールがあります。また、牽引手術台を使うことで患者さんの脚を適切な位置に保持し、小さい傷口でも手術を行うことができます。人工股関節置換術をめぐっては、このような医療機器の進歩が大きく、さまざまな技術が取り入れられています。

MIS(最小侵襲手術)ついて教えてください

関節包靭帯

関節包靭帯

手術の若年齢化を考えても、術後の脱臼リスクなどを軽減し、どのような動作でもできる限り行えるようにすることが重要です。そのための方法として注目が高まっているのが、関節包靭帯を切らない手術です。股関節は周りを筋肉で覆われ、その中で関節包という柔軟性のある袋状の組織に包まれています。股関節を動かすと、筋肉は関節包の上を滑らかに動きます。関節包の内側には滑液包という膜と関節包靱帯がありますが、従来の手術方法では切らざるを得ませんでした。しかし、これらを残すことで股関節の安定性が高まり、脱臼リスクは大幅に低減できます。筋肉が動的安定性を保つのに対して、関節包靭帯は静的安定性を保ち、どちらも大切な役割を担っています。この両方を残すことでより高いレベルでの軟部組織の温存が可能となり、患者さんの早期の回復も期待することができます。近年ではMISが一般化してきましたが、関節包靭帯を切らない手術についても、このひとつとして考えることができると思います。当初は、皮膚切開をできるだけ抑え、小さな傷しか残さないことをMISと呼んでいました。それが筋肉を切らないで行う手術、さらには関節包靭帯を切らない手術へと、その意義を広げるように技術が進んできています。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop